たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
私は、目の前の湊を見た。
湊は、俯いていた。

すぐに、隣から視線を感じた。
私は、振り返る。

拓真と目が合う。

とっくに、拓真も気づいていた。

二人で、たくさん話し合ったから。
先に、話しておくべきか。
後から、話した方が良いのか。

これ以上、嘘を塗り広げてはいけない。
それが、私たちの出した答えだった。

でも、私は、拓真から視線を逸らした。
拓真に、背を向けた。

カバンを肩にかけた。
勢いよく、立ち上がった。

湊を、抱き上げる。
外に向かって、歩き出す。

みんなが明るいから、明るくしなきゃ。
みんなが祝ってるから、祝わなきゃ。

私だって、拓真だって。
湊にそんなことさせたいわけじゃないから。

そうやって、外に出たものの。

さっきまで、あんなに、あったかかったのに。

顔を、手を、纏う風が痛い。
外は、やっぱり寒い。

私は、足を止める。
一旦、湊を下ろす。

白い息を吐きながら。
カバンの中を覗く。

湊の上着を見つける。
取り出す。

また、湊を見る。

事務所前の駐車スペースは、年中ライトアップされている。だから夜でも人の顔が比較的はっきりと見える。

その子は、やっぱり。
まだ、俯いていた。

私は、しゃがみこむ。

「湊、びっくりさせてごめんね……」 

そう言いながら、上着を着せる。
でも、返事はすぐには返ってこない。

腕を全部、通し終えたとき。

「もっと、早く言ってくれたらよかったのに」

顔を、パッと上げた。
湊の拗ねた声が、聞こえてきたから。

(あーー、そっかそっか……)

その子の顔は見えない。
でも、それでもいい。

私は、真っ直ぐ、伝えた。

「湊さ、今日もお仕事だったでしょ?」
「……うん」
「一日そんな気持ちで過ごさせたくないなって。ねえさん、そう思っちゃった」


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