たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
この窓が見せる景色は、ここを訪れるたびに変わっていった。差し込む太陽の光は、恵みの雨に変わり、今度はその雨粒が、白雪となって降り注ぐ。
でも、私たちはどれだけ会えない時間が長くても、どれだけ季節が巡っても、変わらずにいれた。
テレビの音をなんとなく流しながら、窓際に座って、たまに訪れる車の流れを眺めることもあれば、その流れが滞るとシャワーを浴びて、欲混じりな寂しさをドライヤーの音で掻き消す。
そして、台本と一人向き合う拓真が、ちゃんとそばにいることを確認するように、時々ベッドサイドへこっそりと視線を移す。
これからもずっと、そんな壊すのが怖いくらい貴重な一日を、静かに続けていけたら。私は、それだけで幸せだった。
「鈴子?」
「んー?」
「鈴子さん?」
三度目の夏の表情をボーっと眺めていると、遠くから聞こえていた拓真の声が、どんどんと耳のそばまで寄ってくる。
(あれ?拓真がさん付けなんて、珍しくない?)
「なーに……?」
不思議に思って振り向くと、小さなうさぎのマスコットキーホルダーが、拓真の動きに合わせて手を振っているではないか!?
(えーっと……これは、確か、PUPUのププちゃん??だよね??)
真剣な眼差しで台本と向き合っていた拓真が、一気に漂う空気を和ませてしまうから、私はその温度差についていけず、文字どおり固まってしまう。
「……ごめん……いや、さすがにちょっと子供っぽすぎたか…?」
拓真はうさぎのププちゃんを、ズボンのポケットの中へと隠し、恥ずかしそうに俯いた。
(うっそ……拓真って、そんな表情もするんだ……かわよ……)
「違う!違う!ちょっとびっくりしただけ!可愛いねっ、それ!」
悶える心を落ち着けようと、拓真の俯いた顔を覗き込んで、いつもの仕返しを試みた。
「何、何?ひょっとして、私のために買ってくれたとか~?」
(……って、まさかね。拓真がそんな)
「うん……」
すると予想に反して拓真は、下唇を噛み締めながら首をわずかに縦に振り、小さな声でそう答えたのだ。
(うん!?今、うんって、言ったよね!?!?)
「………待機中に、売店で見つけた」
「えっ!それってさ!もしかしなくても!プレゼント、ってやつじゃんね?」
私はポケットに隠されたププちゃんを、もう一度見せてほしいと、興奮気味にぴょんぴょんと飛び回りながら追いかけまわす。
でも、私よりはるかに大きな拓真は、それを頭上に高く持ち上げて、近づくことも許してくれない。
「ねえ!ちょうだいよ~!」
「ムリ」
「届かないってば!!」
「ムリなもんは、ムリ」
上を向いてばかりいたせいで、足元まで気を配れなかった私は、拓真の後ろにベッドフレームがあることすら分からなかった。
拓真が後ろに向かって倒れると、私の身体も自然にそれに伴うように宙に浮く。
(えっ……?)
気づいたときには、大きな身体の上に乗っかるようにまたがりながら、拓真の顔のそばにはどっしりと両手をついていた。
二人揃って、声すら発することが出来なくなって、そこには互いの呼吸音だけが残る。
こんな至近距離で、こんなに長い時間、拓真の目を見つめるのは初めてだ。
いくら視線を逸らそうと思っても、今はまるで拓真の真っ直ぐな眼差しに、縛られているみたい。
すると、拓真の手の中にあったププちゃんがコロコロと床へ転がり、目が覚めるみたいに私の止まった時間は動き出す。
(って、何してんの、私!)
「……あははっ……ごめん、ごめん」
重なった視線を逸らすために、大きな身体の上から急いで降りようとした。
でも、なぜか自分とは別の力が加わり、押し倒したはずの私が、今度は押し倒された側になっているではないか!?
(……ん?何が起きた?)
しかも拓真の眼差しは、逸らそうとするどころか、一直線に私の目を捉えてくる。
「………俺といて、退屈じゃない?平気?」
「ん?退屈?全然、っていうか、どうしたの。急に?」
「俺、鈴子に、してやれないこと、ばっかでしょ」
「……はははっ……何、言ってんの?こんなに、笑わせてくれてるじゃん」
そんなの、今に始まったことじゃない。ようやく当たり前になりつつあった時間を、突然気に止めたように話す拓真は、いつになく不安気な顔をしていた。
「拓真。ちょっと、疲れてるんだって……?ね?一旦、寝たら?」
私が力づくで、拓真の広い肩を押し返そうとしても、明確な力の差が生まれた今では、ぴくりとも動かない。
(んー、もう!なんで動かないの?)
「………眠くない」
「えーっと……じゃあ、どうしよっか?」
「ね?どうしよっか?」
(えーーっ!?分かんない分かんない!!ってか、今のは絶対、拓真が答える番じゃん!!!)
でも、私たちはどれだけ会えない時間が長くても、どれだけ季節が巡っても、変わらずにいれた。
テレビの音をなんとなく流しながら、窓際に座って、たまに訪れる車の流れを眺めることもあれば、その流れが滞るとシャワーを浴びて、欲混じりな寂しさをドライヤーの音で掻き消す。
そして、台本と一人向き合う拓真が、ちゃんとそばにいることを確認するように、時々ベッドサイドへこっそりと視線を移す。
これからもずっと、そんな壊すのが怖いくらい貴重な一日を、静かに続けていけたら。私は、それだけで幸せだった。
「鈴子?」
「んー?」
「鈴子さん?」
三度目の夏の表情をボーっと眺めていると、遠くから聞こえていた拓真の声が、どんどんと耳のそばまで寄ってくる。
(あれ?拓真がさん付けなんて、珍しくない?)
「なーに……?」
不思議に思って振り向くと、小さなうさぎのマスコットキーホルダーが、拓真の動きに合わせて手を振っているではないか!?
(えーっと……これは、確か、PUPUのププちゃん??だよね??)
真剣な眼差しで台本と向き合っていた拓真が、一気に漂う空気を和ませてしまうから、私はその温度差についていけず、文字どおり固まってしまう。
「……ごめん……いや、さすがにちょっと子供っぽすぎたか…?」
拓真はうさぎのププちゃんを、ズボンのポケットの中へと隠し、恥ずかしそうに俯いた。
(うっそ……拓真って、そんな表情もするんだ……かわよ……)
「違う!違う!ちょっとびっくりしただけ!可愛いねっ、それ!」
悶える心を落ち着けようと、拓真の俯いた顔を覗き込んで、いつもの仕返しを試みた。
「何、何?ひょっとして、私のために買ってくれたとか~?」
(……って、まさかね。拓真がそんな)
「うん……」
すると予想に反して拓真は、下唇を噛み締めながら首をわずかに縦に振り、小さな声でそう答えたのだ。
(うん!?今、うんって、言ったよね!?!?)
「………待機中に、売店で見つけた」
「えっ!それってさ!もしかしなくても!プレゼント、ってやつじゃんね?」
私はポケットに隠されたププちゃんを、もう一度見せてほしいと、興奮気味にぴょんぴょんと飛び回りながら追いかけまわす。
でも、私よりはるかに大きな拓真は、それを頭上に高く持ち上げて、近づくことも許してくれない。
「ねえ!ちょうだいよ~!」
「ムリ」
「届かないってば!!」
「ムリなもんは、ムリ」
上を向いてばかりいたせいで、足元まで気を配れなかった私は、拓真の後ろにベッドフレームがあることすら分からなかった。
拓真が後ろに向かって倒れると、私の身体も自然にそれに伴うように宙に浮く。
(えっ……?)
気づいたときには、大きな身体の上に乗っかるようにまたがりながら、拓真の顔のそばにはどっしりと両手をついていた。
二人揃って、声すら発することが出来なくなって、そこには互いの呼吸音だけが残る。
こんな至近距離で、こんなに長い時間、拓真の目を見つめるのは初めてだ。
いくら視線を逸らそうと思っても、今はまるで拓真の真っ直ぐな眼差しに、縛られているみたい。
すると、拓真の手の中にあったププちゃんがコロコロと床へ転がり、目が覚めるみたいに私の止まった時間は動き出す。
(って、何してんの、私!)
「……あははっ……ごめん、ごめん」
重なった視線を逸らすために、大きな身体の上から急いで降りようとした。
でも、なぜか自分とは別の力が加わり、押し倒したはずの私が、今度は押し倒された側になっているではないか!?
(……ん?何が起きた?)
しかも拓真の眼差しは、逸らそうとするどころか、一直線に私の目を捉えてくる。
「………俺といて、退屈じゃない?平気?」
「ん?退屈?全然、っていうか、どうしたの。急に?」
「俺、鈴子に、してやれないこと、ばっかでしょ」
「……はははっ……何、言ってんの?こんなに、笑わせてくれてるじゃん」
そんなの、今に始まったことじゃない。ようやく当たり前になりつつあった時間を、突然気に止めたように話す拓真は、いつになく不安気な顔をしていた。
「拓真。ちょっと、疲れてるんだって……?ね?一旦、寝たら?」
私が力づくで、拓真の広い肩を押し返そうとしても、明確な力の差が生まれた今では、ぴくりとも動かない。
(んー、もう!なんで動かないの?)
「………眠くない」
「えーっと……じゃあ、どうしよっか?」
「ね?どうしよっか?」
(えーーっ!?分かんない分かんない!!ってか、今のは絶対、拓真が答える番じゃん!!!)