たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「ガチャっ、ギーー」

後ろから、ドアが開く音が。

暖房が効いたこの部屋に、寒寒とした風が流れ込んでくる。

私の体はブルッと震えた。

「どういうことですか?」

パッと、振り返った。
はじめ先生と、目が合った。

ジャンパーに、デニム。
こちらも、思いっきり私服だ。

この来客は、私も知らなかった。

だから、私は固まる。
心の声が漏れる。

「……はじめ先生、どうして?」

はじめ先生は、ようやく、ドアノブから手を離した。

「ギーー、バタン……」

ようやく、ドアが閉まった。
もう、冷たい風も入ってこない。

「いや……小濱父に、飲み会があると……」
「あっ!ああー!そういうことでしたか!」
 
私はとっさに、明るく笑っていた。
すべてを、隠すために。

でも、はじめ先生は笑わない。
私を、じっと見つめたまま。

「小濱さん。結婚、するんですか?」

(あ、ああ……)

私も、もう笑えない。
言葉が、出てこない。

すると、後ろから足音が。
とっさに、くるっ、振り返る。

根元マネージャーだ。
根元マネージャーがキッチンから歩いてくる。

一点だけを見つめながら。

宇佐見さんも、通り過ぎる。
私も、通り過ぎる。

はじめ先生の隣で、止まった。
何やらコソコソ話してる。

「ちょっと、いきなり失礼でしょ?」
「末歩、違うんだ。俺は湊の担任として」

でも、全部聞こえてる。

(よ、呼び捨て?)

ここにいる全員の視線が、二人に集まる。

根元マネージャーは、ハッとした。
私たちを、見た。

顔を真っ赤にした。
その顔には、恥ずかしさが。

だから、すぐさま、はじめ先生の腕を、パチーンと叩く。

「もうっ!はじめっ!外でその呼び方はやめてってあれほど」

そう、コソコソ。
でも、やっぱり全部聞こえてる。

皆、衝撃を受けている。

声を出せないくらい。
固まってしまうくらい。

「先生」

でも、湊の声がした。

湊は、拓真の腕の中から、はじめ先生を、真っ直ぐ見ている。

「……ん?なんだ?」

だから、はじめ先生も、振り向く。
湊を、真っ直ぐ見つめる。

すると、湊は、ブルブルと首を振った。

私には、わからなかった。
その意味が。

でも、はじめ先生は、やけに真剣な顔つきで、ちゃんと答えた。

「良いんだな?」

それには、湊も真剣な顔つきで、うん、うんと返した。

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