たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
後にも、先にも★
一人になったら、どうせまた、いつもみたいに考えたくないことも浮かんでくるんだろうなと、それと戦う覚悟はしていた。

でも、力強い言葉と、温かな余韻が、永遠に身体に残り続けていて、一度も心配とか、不安とか、そんな気持ちにはならなかった。

そうして、私の元まで飛んで帰ってきてくれた拓真の垂れた前髪からは、まだ拭き足りないのではと思うくらいに、ポタポタと雫が滴り落ちてきていた。

「どう?待った?」
「……はははっ。ううん。あっという間だった」

今、この数分だけでも、私のために生きてくれてるみたいに思えて、それだけで私の胸は、もう何にも邪魔されないくらい、いっぱいになった。

「じゃあ……行ってきます」
「うん……待ってる」

ベッドから立ち上がると、しっかりとした足取りでシャワールームへと向かう。

いつものように、片足ずつ、丁寧にショーツを脱いだ。

そして、念入りに時間をかけながら、身体を洗う。

私は、急がなかった。もう、これまでの揺れ動いていた私とは違う。

拓真を待ったあの数分だけで、すでにどれだけ時間が経とうとも、この気持ちは揺らぎようがないことを、自分でもわかっていたから。

やっぱり、どれだけゴシゴシと身体を洗っても、あの温もりが消えることはない。

私が次にシャワールームから出てきたとき、なぜか拓真は台本を開きながら、ドアのそばに立っていた。

「………拓真?」
「ごめん。なんか、落ち着かなくて……」

そう言いながら、拓真は、きまりが悪そうに頭を掻いた。

私はそんな拓真の胸の中に、思いっきり飛び込んで、嬉々とした目で見上げる。

「おっ、と……鈴子?どした?」
「本当に?本当に?私たち、変わんないよね?」

拓真は私に負けないくらい、うんと強い力で抱きしめ返してくれた。

「絶対ない。俺が、させない」

あれほど私の中でブレーキになっていたいくつもの不安は、拓真の頼もしい言葉たちのおかげでスッと溶けていった。

横向きに抱きかかえられると、ハラハラと散らばる乾かしたばかりの長い髪に、丁寧に指を通しながら、ベッドの上に優しく寝かせられる。

そうして、また、私の上にまたがる拓真に、今度は自分から良いよと言ってみせるように、じっとその目を見つめ返した。

すると、大きな手が頬に触れて、まるで言葉がなくても心が通うように、拓真も微笑みながらうなづいてくれる。

そんな拓真の視線が、私の唇に移ると、ごくりと音を立てながら、立派な喉仏は大きく動いた。

狙いを定めたみたいに、肌を掠める温かな息は一点に向かって、じわじわと近づいてくる。

拓真は瞼を閉じながら、まるで味覚だけで味わうみたいに、私の唇に食らいついた。

閉じるタイミングを見失った瞳には、その一瞬一瞬がはっきりと映る。

噛み締めるような表情。

耳に届く艶めかしい密着音。

それらはあまりにも刺激が強すぎて、だんだんと目を開けていることすらも憚られてくる。

先ほどよりも力の抜けて、緩んだ下唇には、そうやって、まるで境目をなくして、一つになるみたいに、何度も、何度も、拓真の唇が吸い付いてきた。

湯上がりだけではもう片付けられないくらい、まるで沸騰しているみたいに、私の身体は熱く火照っている。

走ってもいないのに、心臓はバクバクと跳ね上がり、唇と唇の間に生まれた隙間から、次第に息が漏れるみたいな呼吸になってきた。

私は、知らなかった。その隙間は決して息の逃げ場なんかじゃなくて、もっと深くて、もっと身体が熱くなるような、口先だけじゃない繋がりを生むものなのだと。

(……ん!?)

そのまま口内にゆっくりと拓真の舌が入ってくると、また大きく目を見開いて、戸惑う舌は硬直するように小さく縮こまる。

でも、その舌先で口内を可愛がるように撫で回されると、集中していた強張りがふっと抜けて、スルスルと拓真の舌に吸い寄せられた。

恥ずかしげもなく、ねっとりとまとわりつくような卑猥な音が、耳の奥にまで絡みついてくる。

そんな唾液まで分かち合うみたいな、大胆なキスを、拓真としている自分が本当に信じられない。

私は確かに、そのうごめく舌に、息を乱して、目を開けることも忘れるくらいに、とにかく必死にしがみついている。

拓真の舌から高ぶる熱を、これでもかというほど受け取ると、まるでのぼせたみたいに頭がボーっとしてくる。

快感に喘ぐような、拓真の吐息交じりの呼吸も、どんどんと遠くなっていった。

すると、拓真はご褒美をくれるように、私の舌先を優しくチュッと吸う。

今度は、目尻にまで熱いものが込み上げてくる。

その涙が、私たちの間に久々の静けさを呼び、閉ざした視界もゆっくりと戻ってきた。

「……っ、はっ……なんて、顔してんの」
「……ふぇっ?………あっ……私ってば、悲しくもないのに、なんで泣いて、っ……」

手の甲で涙を拭おうとすると、それを止めるように拓真が私の手首を掴んだ。

その代わりに、唇の潤んだ感触が、流れ落ちる涙の跡に沿って、目尻や頬へと伝っていく。

< 17 / 48 >

この作品をシェア

pagetop