たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
ゲート前に立っている守衛さんは、私たちのこの一連の流れを一部始終見ていたようで、あまり怪しまれることなく敷地内に入ることができた。
私たちは身体を蝕む暑さから、ただ逃げるように生い茂る木々の間を抜けていく。
(……にしても、長いな)
あの小さく見えた建物に向かって、確かに近づいてはいるのだけれど、なかなか目の前には現れてくれない。
暑さに体力は消耗され、私と湊の口数は減りに減った。
かれこれ数分歩き続けたところで、ようやくガラス戸の前まで漕ぎ着ける。
しかし、ここからがまた試練の連続だった……。
ガラス戸が自動で開くと、広大なスペースから流れる涼しい風が、私たちの身体を労うように吹きつける。
(す、涼しい……!)
しばしの間、消耗した体力を回復していると、入り口のすぐそばにある、受付カウンターに立つフロントスタッフの女性と目があった。
その目は警戒心たっぷりというものだった。
(あっ、そうだ。ひとまず身分を証明しないと……)
「あのー、これを……」
私は何はともあれ、根本マネージャーから預かったカードキーを見せてみる。
カードキーと私の顔をかなり疑い深い目で交互に確認されたが、それだけで信用には値しなかったようで、次は受話器に手をかけ始めた。
「確認のため、こちらからお部屋までお電話いたしますね」
(おぉ……やっぱり、セキュリティかなり厳しいんだなあ)
「フロント係の前沢です……今、こちらにお客様がいらしておりまして……いえ、お知り合いでしたら、それで……あっ」
目の前の女性は、なぜか一方的に電話を切られたらしく、受話器を持ったまま途方に暮れていた。
「えーっと……家主は、なんと?」
「……あっ、はい。こちらへお越しくださるそうです」
(わざわざ出てこなくても……って、あれ、湊は?)
ぴったりと隣合うように歩いていた湊の姿が、いつの間にか、そばから消え、一瞬にして身体からは血の気が引いていく。
とにかく目を凝らしながら、必死になって辺りを見渡した。
(湊?湊?……あっ、いた!良かったぁ……って、あのー、ちょいと馴染みすぎじゃないかい?)
その子はソファの上にちょこんと座り、ガラス窓の向こうにある庭園を眺めていた。
さらには、リュックから取り出した水筒のふたをクルクルと回し、お茶を注ぎ入れると、ひとりで茶会まで開き始めている。
「あのー、子供とあちらで待たせてもらっても良いですか?」
「はい、どうぞ」
私も湊の隣に手に持つダンボールと、背負っていた黒いリュックを置かせてもらった。
ようやく両手の自由が効くようになると、湊の頭から帽子を取って、見える汗を手持ちのタオルに吸わせた。
すると、背後から先ほどの女性の声がまた聞こえ始める。
「すみません。一度確認させていただきたくて……」
振り向きながらその様子を伺うと、会話の相手はどうやら拓真みたいだ。
黄昏中の小さな身体に声をかけようと、視線を落とすが、湊はいつのまにか自分の荷物をリュックにまとめ、拓真の元へと駆け出していた。
そして拓真の足元で、大きな身体を見上げながら、元気よくこう叫ぶ。
「父ちゃん!」
「「と、とうちゃん!?」」
衝撃を隠せない私と、フロントスタッフの女性は、思わず声が重なる。
一方、拓真はその声に目線を下げ、小さな身体を抱きかかえると、何ごともなかったように、目の前の女性との話を再開させた。
「次の仕事の関係で、こういう呼び方なんです。この子と、あちらの女性には、しばらくの間、こちらに住んでいただくことになりましたので。彼らのことも目にかけていただけたらと」
「はい!お任せくださいっ!」
フロントスタッフの女性も、なんだか胸のつかえが取れたように、ハキハキとそう返事をした。
「ありがとうございます。では、これで。失礼します」
私たちは身体を蝕む暑さから、ただ逃げるように生い茂る木々の間を抜けていく。
(……にしても、長いな)
あの小さく見えた建物に向かって、確かに近づいてはいるのだけれど、なかなか目の前には現れてくれない。
暑さに体力は消耗され、私と湊の口数は減りに減った。
かれこれ数分歩き続けたところで、ようやくガラス戸の前まで漕ぎ着ける。
しかし、ここからがまた試練の連続だった……。
ガラス戸が自動で開くと、広大なスペースから流れる涼しい風が、私たちの身体を労うように吹きつける。
(す、涼しい……!)
しばしの間、消耗した体力を回復していると、入り口のすぐそばにある、受付カウンターに立つフロントスタッフの女性と目があった。
その目は警戒心たっぷりというものだった。
(あっ、そうだ。ひとまず身分を証明しないと……)
「あのー、これを……」
私は何はともあれ、根本マネージャーから預かったカードキーを見せてみる。
カードキーと私の顔をかなり疑い深い目で交互に確認されたが、それだけで信用には値しなかったようで、次は受話器に手をかけ始めた。
「確認のため、こちらからお部屋までお電話いたしますね」
(おぉ……やっぱり、セキュリティかなり厳しいんだなあ)
「フロント係の前沢です……今、こちらにお客様がいらしておりまして……いえ、お知り合いでしたら、それで……あっ」
目の前の女性は、なぜか一方的に電話を切られたらしく、受話器を持ったまま途方に暮れていた。
「えーっと……家主は、なんと?」
「……あっ、はい。こちらへお越しくださるそうです」
(わざわざ出てこなくても……って、あれ、湊は?)
ぴったりと隣合うように歩いていた湊の姿が、いつの間にか、そばから消え、一瞬にして身体からは血の気が引いていく。
とにかく目を凝らしながら、必死になって辺りを見渡した。
(湊?湊?……あっ、いた!良かったぁ……って、あのー、ちょいと馴染みすぎじゃないかい?)
その子はソファの上にちょこんと座り、ガラス窓の向こうにある庭園を眺めていた。
さらには、リュックから取り出した水筒のふたをクルクルと回し、お茶を注ぎ入れると、ひとりで茶会まで開き始めている。
「あのー、子供とあちらで待たせてもらっても良いですか?」
「はい、どうぞ」
私も湊の隣に手に持つダンボールと、背負っていた黒いリュックを置かせてもらった。
ようやく両手の自由が効くようになると、湊の頭から帽子を取って、見える汗を手持ちのタオルに吸わせた。
すると、背後から先ほどの女性の声がまた聞こえ始める。
「すみません。一度確認させていただきたくて……」
振り向きながらその様子を伺うと、会話の相手はどうやら拓真みたいだ。
黄昏中の小さな身体に声をかけようと、視線を落とすが、湊はいつのまにか自分の荷物をリュックにまとめ、拓真の元へと駆け出していた。
そして拓真の足元で、大きな身体を見上げながら、元気よくこう叫ぶ。
「父ちゃん!」
「「と、とうちゃん!?」」
衝撃を隠せない私と、フロントスタッフの女性は、思わず声が重なる。
一方、拓真はその声に目線を下げ、小さな身体を抱きかかえると、何ごともなかったように、目の前の女性との話を再開させた。
「次の仕事の関係で、こういう呼び方なんです。この子と、あちらの女性には、しばらくの間、こちらに住んでいただくことになりましたので。彼らのことも目にかけていただけたらと」
「はい!お任せくださいっ!」
フロントスタッフの女性も、なんだか胸のつかえが取れたように、ハキハキとそう返事をした。
「ありがとうございます。では、これで。失礼します」