たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
前に会ったときは、明らかにぶっきらぼうな性格に変わっていたから、てっきりパブリックイメージも、そうなっているものだと思っていた。
でも、全然そんなことなくて、オンの拓真は、かなりキャリアは積んでるはずなのに、調子に乗るどころか、深々と頭を下げるし、いちいち親切丁寧だ。
かと思えば、私のそばには、ただダンボール一つを持ち去るために、まるで通りすがりのついでみたいに近づいてくる。
目の前でころころと変わる拓真の態度に、私はもう放心状態だった。
その背中は、だんだんと遠ざかっていく。
かろうじて声が聞こえるギリギリのところまで歩いたところで、拓真はこちらに顔を見せ、まるで私を呼び寄せるようにこう叫んだ。
「行きますよ?」
そして、待つという言葉を知らないみたいに、またひたすらに進み続けている。
「ちょ、ちょっと待って!」
慌ててそばに残されたダンボールを持ち上げると、はあはあと息を上げながら走り、エレベータードアを前に、やっとその背中に追いついた。
「はぁ……はぁ……早いって……」
「体力、落ちたんじゃないか……?」
(あっ……また、ぶっきらぼうモードだ……)
「……はあ?そっちだって……あっ、」
挑発に乗せられて失言しそうな自分の顔を、すかさず拓真のいない方向へ背けた。
(やばっ、ポロッと言っちゃうところだった……)
「なんだ?」
「……いや、なにも?てか、大丈夫?この子、所構わずあの呼び方するよ」
「俺が説明すれば良い話じゃないか。なあ、ぼう?」
「うんっ!」
「………ぼ、ぼう?」
拓真の腕の中から、ひょっこりと顔を出した湊が、意気揚々とこう教えてくれた。
「柳生さんがとーちゃんで、僕がぼう」
「へ、へえ〜」
分かったように頷いてみせるけれど、実際は、なんのこっちゃ、さっぱりだ。
そうこうしているうちに、ドアが開き、エレベーターに乗り込む拓真の顔を、鏡越しに一瞬だけ見ることができた。
(メガネ、かけるんだ。初めて、見たかも……)
広々としたエレベーターの中で、わざとらしく空間を空けるように私も位置取った。
今は背中しか見えていないけれど、ワイシャツにスラックスという格好は、いかにもどこかへ行こうとしていた人のものだ。
それに私とは違って走ってもいないのに、よく見ると、そのたくましい肩は上下に動き、うなじにはじんわりと汗が滲んでいる。
(……もしかして、急いできた?)
「あのー、もし、行くとこあるなら、全然そっち優先してもらって、構わないんだけど……」
「……いや?今日は午後からオフだと、根本から聞かなかったか?」
「でも、その格好……」
引っかかりを言葉にすると、拓真は自分の身なりを確かめだした。
「格好?いつもと何ら変わりないが……」
「じゃあ、何?本当にあれを言うために、わざわざ出てきてくれたってこと?」
「……違う。ただ、外の空気を、吸いたかっただけだ」
「…………あはははっ」
エレベーター内に笑い声が響くと、拓真がムキになって私の顔を見てきた。
「なんだ?」
「いや。相変わらず素直じゃないなあ、って」
「あ、相変わらずって、お前、俺の何を見て」
「あははっ……え?そんなの全部だよ」
止まらない笑い声が、ますます癪に触ったようで、拓真はまた私に対抗してこようとする。
「そもそもな……」
ついには、拓真の腕の中でジーッと静観していた湊まで、この小競り合いに参戦してくる。
「二人は、友達なの?」
その純粋な問いの答えをなすりつけ合うように、どちらからともなくジリジリと視線を合わせた。
結局、その勝負に負けた私は責任を持って、出来るだけわかりやすく、的確に答えたつもりだった。
「……んー、そうだな〜。友達っていうか。同志?かな」
私がそう言うと、拓真は身体を前方へと向き直し、まるで興奮が冷めたように、かろうじて聞こえる声で静かにこう言った。
「同志、って……まあ、もう、それで良い」
(……あれ?答え方、まずかった?でも、本当にそういうしかないじゃん。てか、文句あるなら、自分が答えれば良かったじゃん!!)
でも、全然そんなことなくて、オンの拓真は、かなりキャリアは積んでるはずなのに、調子に乗るどころか、深々と頭を下げるし、いちいち親切丁寧だ。
かと思えば、私のそばには、ただダンボール一つを持ち去るために、まるで通りすがりのついでみたいに近づいてくる。
目の前でころころと変わる拓真の態度に、私はもう放心状態だった。
その背中は、だんだんと遠ざかっていく。
かろうじて声が聞こえるギリギリのところまで歩いたところで、拓真はこちらに顔を見せ、まるで私を呼び寄せるようにこう叫んだ。
「行きますよ?」
そして、待つという言葉を知らないみたいに、またひたすらに進み続けている。
「ちょ、ちょっと待って!」
慌ててそばに残されたダンボールを持ち上げると、はあはあと息を上げながら走り、エレベータードアを前に、やっとその背中に追いついた。
「はぁ……はぁ……早いって……」
「体力、落ちたんじゃないか……?」
(あっ……また、ぶっきらぼうモードだ……)
「……はあ?そっちだって……あっ、」
挑発に乗せられて失言しそうな自分の顔を、すかさず拓真のいない方向へ背けた。
(やばっ、ポロッと言っちゃうところだった……)
「なんだ?」
「……いや、なにも?てか、大丈夫?この子、所構わずあの呼び方するよ」
「俺が説明すれば良い話じゃないか。なあ、ぼう?」
「うんっ!」
「………ぼ、ぼう?」
拓真の腕の中から、ひょっこりと顔を出した湊が、意気揚々とこう教えてくれた。
「柳生さんがとーちゃんで、僕がぼう」
「へ、へえ〜」
分かったように頷いてみせるけれど、実際は、なんのこっちゃ、さっぱりだ。
そうこうしているうちに、ドアが開き、エレベーターに乗り込む拓真の顔を、鏡越しに一瞬だけ見ることができた。
(メガネ、かけるんだ。初めて、見たかも……)
広々としたエレベーターの中で、わざとらしく空間を空けるように私も位置取った。
今は背中しか見えていないけれど、ワイシャツにスラックスという格好は、いかにもどこかへ行こうとしていた人のものだ。
それに私とは違って走ってもいないのに、よく見ると、そのたくましい肩は上下に動き、うなじにはじんわりと汗が滲んでいる。
(……もしかして、急いできた?)
「あのー、もし、行くとこあるなら、全然そっち優先してもらって、構わないんだけど……」
「……いや?今日は午後からオフだと、根本から聞かなかったか?」
「でも、その格好……」
引っかかりを言葉にすると、拓真は自分の身なりを確かめだした。
「格好?いつもと何ら変わりないが……」
「じゃあ、何?本当にあれを言うために、わざわざ出てきてくれたってこと?」
「……違う。ただ、外の空気を、吸いたかっただけだ」
「…………あはははっ」
エレベーター内に笑い声が響くと、拓真がムキになって私の顔を見てきた。
「なんだ?」
「いや。相変わらず素直じゃないなあ、って」
「あ、相変わらずって、お前、俺の何を見て」
「あははっ……え?そんなの全部だよ」
止まらない笑い声が、ますます癪に触ったようで、拓真はまた私に対抗してこようとする。
「そもそもな……」
ついには、拓真の腕の中でジーッと静観していた湊まで、この小競り合いに参戦してくる。
「二人は、友達なの?」
その純粋な問いの答えをなすりつけ合うように、どちらからともなくジリジリと視線を合わせた。
結局、その勝負に負けた私は責任を持って、出来るだけわかりやすく、的確に答えたつもりだった。
「……んー、そうだな〜。友達っていうか。同志?かな」
私がそう言うと、拓真は身体を前方へと向き直し、まるで興奮が冷めたように、かろうじて聞こえる声で静かにこう言った。
「同志、って……まあ、もう、それで良い」
(……あれ?答え方、まずかった?でも、本当にそういうしかないじゃん。てか、文句あるなら、自分が答えれば良かったじゃん!!)