たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
Win-Win?
どうしても止めることができなかった興奮を落ち着けるように、並べておいた食事にてきぱきと箸をつけ始めた。

湊はすでに夕食を食べ終わり、私の目の前でいつものように時代劇を見ている。

すると拓真が遅れてこっちの部屋に戻ってきた。

そして、そのまま定位置のソファに向かうのかと思いきや、私の斜め前に置かれた椅子に、湊と並ぶようにして座った。

「えほっ、えほ……」

驚きのあまり、豪快に咽せ込むと、座ったばかりの拓真は、なぜかまた立ち上がる。

キッチンの方向から戻ってきたときには、両手が水の入ったコップで塞がれていて、着席と同時に、そのうちの一つを何も言わずに、私の前に差し出した。

「……ありがと」

(……何?あれで通じたってこと?)

出された水を飲みながら、冷静に考えてみるが、あんな無茶苦茶なやり方で何がどうなってこうなったのか、自分にもよくわからなかった。

しかも拓真は湊を膝の上に乗せると、一緒になって、その眼差しをテレビへと向け始める。

「この作品は、かなり古いものだが……親父さんから教えてもらったのか?」

「うん。父さんとね、毎日一緒に見るんだ」
「……そうか」

「この立ち回り、カッコいいなあ」
「確かに、良い形をしてる」

「父ちゃんは、本物の刀持ったことある?」
「ああ。こっちの世界では、真剣と呼ぶ」

「真剣……」

(まあ二人が仲良いことに越したことはないけどさ……)

私は二人の間で繰り広げられる小難しい話を、まるで一人取り残されたように、じーっと見つめていた。

すると、その視線に気づいた拓真と、目と目がぶつかる。

私は咄嗟に、何か差し障りのない話題がないかと、空っぽの頭から捻り出した。

「あっ、そうだ……ゆで卵とサラダチキン、英佑さんから聞いたものが……」

目が合ったことを誤魔化すみたいに、食べ終わった食器たちを手にしながら立ち上がり、私はキッチンへと向かっていた。

「……お前が、作ったのか?」

「作ったっていうか……ついでというか……英佑さんの教えというか……」

でも、もう一人の足音も、ずっと後ろに続くように付いてくる。

私は知らん顔で、食べ終わった皿たちをシンクの中に放り込むが、やっぱり気になるものは気になる。

「………ねえ?何?」
「確認」
「確認?ああ、火の元とか?大丈夫だよ。私、こう見えて、そういうところはちゃんとしてるから」

そして、冷蔵庫にある拓真用の食事を、温めようと動き出すが、まだ拓真は私の後ろから離れようとしない。

しかも、一言だけ意味のわからない言葉を言っただけで、そばについてくるくせに、ずーっと黙りっぱなしだ。

「……なんでも良いけどさ、私、これから湊をお風呂入れないとだから、どいてくれるかな?」

レンジのタイマーを合わせ、身体をくるりと回転をさせる。

その瞬間、私は思わず、キッチンラックに頭を打ちそうになった。

「うわっ……」

後ろに下がらなきゃ接触しそうな場所に、拓真の顔があったのだ。

さらに、キッチンラックに右手までつき、私の行為を真似てくる。

でも、ここは明かりのない部屋とは違う。

瞳の微妙なコントラストまで、はっきりと私の目に映す。

そのまま、瞳の中に吸い込まれてしまうんじゃないかと思って、不覚にも一瞬だけ、ドキッとした。

だから私は、全ての関心を急いで湊に向けて、その衝撃すらなかったことにしようとする。

「湊ー!お風呂入るよー!準備しておいでー!」

しかし、目の前の映像を食い入るように見つめる湊の言葉は、当然すぐには返ってこない。

代わりに、なぜか拓真が答えた。

「……ちょっと待て、一緒に入るのか?」
「えっ?うん。当然でしょ?」

「……ダメだ」
「はあ?」

「俺が入れる」
「いやいやいや……柳生さんが、湊を?」

そう両者が譲らず、押し問答を繰り返し、結局、拓真は、湊の背中に向かって、声を飛ばし、最終判断を委ねた。

「ぼう。どっちと入りたい?」

私は、湊の声をドキドキしながら待った。
(……湊、ねえさんだよね?ね?)

だが、その答えは大人も予想しないものだった。

「どっちもーー!」

(おいおいおい!湊ーー!百点満点の解答だけどさあ!それだけは、どうやっても、出来ないんだなあーー!)

「……どうする?」

拓真は、またジーッと私を見つめながら、まるで、その選択肢もあるみたいな言い方をしてくる。

私は必死に、見られてもいない身体を隠す仕草をしながら、全力で否定を繰り返した。

「いや?ないない。それだけは、ないから?ないからね?」

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