たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
何度言っても言い足りなくて、そうやって同じ言葉を、延々と連呼していた。
「わーかったって」
その一言で分かるのに……。
あろうことか拓真は、私の頬まで鷲掴み、強制的に黙らせようとしてきた。
結果、この部屋にはまた生活音だけが残される。
私は、目を大きく見開いたまま、全ての思考を停止させた。
頬から痛みがじわじわと抜けていっても、今、私は何をされたんだと、頭の中はずーっとパニック状態。
「ったく……なーにを想像してるんだか……」
拓真は、そうブツブツと言いながら、湊を連れて、さっさとお風呂へ向かってしまう。
そして、食事が温まった合図と共に、ようやく私の意識は、遠いところから戻ってきた。
それからは、二人がお風呂から出てくるまで、シンクの中に残る洗い物をすべて片付けなければと、止まることなく時間を進めた。
ただ、いつまで経っても彼らはリビングに戻ってくる気配がなくて、私は心配になって二人がいるはずの場所に向かう。
水が流れる音はどれだけ近づいても聞こえてこないし、バスルームを開けても使った形跡こそあるけれど、まるで抜け殻みたいになっている。
(どこいったんだ?)
すると、なぜか明かりの見えない寝室の方から拓真の声が聞こえてきた。
その声に引き寄せられて、寝室のドアを開けると、そこには間接照明の柔らかな光が広がっていた。
湊はとっくに寝支度を済ませていて、拓真と並んでベッドボードに背をもたれている。
いつもは小さな手で必死に握られている台本も、今日は拓真の手の中にある。
湊の目は、拓真の手元に釘付けだった。
(今日は湊の声が聞こえないと思ったら……拓真が読んでたのか……)
そして私の姿に気づいた途端、二人は何やらコソコソと話し込み始めた。
「父ちゃん、ちゃんと言わなきゃダメだからね?」
「……わかってるって。ほら、子供はもう寝ろ」
(……ん?なんの話だろう)
拓真はベッドの上から立ち上がり、パタンと閉じた台本をナイトテーブルに置くと、そのまま部屋から出ていこうとする。
私は、反射的にこう伝えていた。
「あっ!ありがとう」
「………あ……ああ」
(ん?何か、言いかけた?)
ドアの前で一瞬立ち止まりはしたものの、気が変わったみたいに、またすぐ部屋から出ていく。
「はぁ……」
そして、そんな挙動不審に消えた背中を見ながら、ベッドの上の湊はやれやれと言った感じに大きくため息をついた。
私はそんな幼い子の気分を変えるように、くすぐる手つきをしながらじわじわと近づいていく。
「なになに?湊?ねえさんに、秘密か~~??」
「やめてよっ。ねえさん。これ以上は、本人たちの問題なんだって」
「へえ~このこの~」
「あはははっ、やめてって……」
そうしてしばらく経つと、無邪気な笑い声は、小さな寝息に変わる。
私は、柔らかな髪を撫でながら、小さな額にキスをして、頭上に灯る間接照明の明かりをぷつりと消した。
そしてベッドの上から立ち上がると、真っ暗な部屋の中をそーっと音を立てないように歩き、私もさっさと残されたミッションを片付けてしまおうと、リビングへ戻る。
再びリビングに戻ってきたときには、もう机の上に置いておいたラップがけのお皿からは、綺麗さっぱり食べ物だけがなくなっていた。
(……食べてくれたんだ)
そんなホッとする私の身体に、生温かい夜風が絡みついてくる。
風を感じる方向に目をやると、ここに来たときみたいに窓が大きく開いていた。
そして、拓真がテラスの柵に肘を置きながら、外の緑を眺めていた。
私は、キッチンに向かうため、その背中を静かに通り過ぎようとする。
でも、後ろを通りかかった瞬間、拓真の控えめな声に引き止められた。
「わーかったって」
その一言で分かるのに……。
あろうことか拓真は、私の頬まで鷲掴み、強制的に黙らせようとしてきた。
結果、この部屋にはまた生活音だけが残される。
私は、目を大きく見開いたまま、全ての思考を停止させた。
頬から痛みがじわじわと抜けていっても、今、私は何をされたんだと、頭の中はずーっとパニック状態。
「ったく……なーにを想像してるんだか……」
拓真は、そうブツブツと言いながら、湊を連れて、さっさとお風呂へ向かってしまう。
そして、食事が温まった合図と共に、ようやく私の意識は、遠いところから戻ってきた。
それからは、二人がお風呂から出てくるまで、シンクの中に残る洗い物をすべて片付けなければと、止まることなく時間を進めた。
ただ、いつまで経っても彼らはリビングに戻ってくる気配がなくて、私は心配になって二人がいるはずの場所に向かう。
水が流れる音はどれだけ近づいても聞こえてこないし、バスルームを開けても使った形跡こそあるけれど、まるで抜け殻みたいになっている。
(どこいったんだ?)
すると、なぜか明かりの見えない寝室の方から拓真の声が聞こえてきた。
その声に引き寄せられて、寝室のドアを開けると、そこには間接照明の柔らかな光が広がっていた。
湊はとっくに寝支度を済ませていて、拓真と並んでベッドボードに背をもたれている。
いつもは小さな手で必死に握られている台本も、今日は拓真の手の中にある。
湊の目は、拓真の手元に釘付けだった。
(今日は湊の声が聞こえないと思ったら……拓真が読んでたのか……)
そして私の姿に気づいた途端、二人は何やらコソコソと話し込み始めた。
「父ちゃん、ちゃんと言わなきゃダメだからね?」
「……わかってるって。ほら、子供はもう寝ろ」
(……ん?なんの話だろう)
拓真はベッドの上から立ち上がり、パタンと閉じた台本をナイトテーブルに置くと、そのまま部屋から出ていこうとする。
私は、反射的にこう伝えていた。
「あっ!ありがとう」
「………あ……ああ」
(ん?何か、言いかけた?)
ドアの前で一瞬立ち止まりはしたものの、気が変わったみたいに、またすぐ部屋から出ていく。
「はぁ……」
そして、そんな挙動不審に消えた背中を見ながら、ベッドの上の湊はやれやれと言った感じに大きくため息をついた。
私はそんな幼い子の気分を変えるように、くすぐる手つきをしながらじわじわと近づいていく。
「なになに?湊?ねえさんに、秘密か~~??」
「やめてよっ。ねえさん。これ以上は、本人たちの問題なんだって」
「へえ~このこの~」
「あはははっ、やめてって……」
そうしてしばらく経つと、無邪気な笑い声は、小さな寝息に変わる。
私は、柔らかな髪を撫でながら、小さな額にキスをして、頭上に灯る間接照明の明かりをぷつりと消した。
そしてベッドの上から立ち上がると、真っ暗な部屋の中をそーっと音を立てないように歩き、私もさっさと残されたミッションを片付けてしまおうと、リビングへ戻る。
再びリビングに戻ってきたときには、もう机の上に置いておいたラップがけのお皿からは、綺麗さっぱり食べ物だけがなくなっていた。
(……食べてくれたんだ)
そんなホッとする私の身体に、生温かい夜風が絡みついてくる。
風を感じる方向に目をやると、ここに来たときみたいに窓が大きく開いていた。
そして、拓真がテラスの柵に肘を置きながら、外の緑を眺めていた。
私は、キッチンに向かうため、その背中を静かに通り過ぎようとする。
でも、後ろを通りかかった瞬間、拓真の控えめな声に引き止められた。