たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
拓真は、さっきからずっと、ベッドサイドに座って、頭を抱えている。

私はもう、横向きになりながら、そのくたびれた背中を、見つめることしかできない。

ワンピースの中から、腕を引き抜いたとき。

拓真は、眉間に皺を寄せながら、苦しそうに、息を吐いた。

それが、私たちの最後。

もう一度。

もう一度、戻ってきてほしい。

ここにきたときみたいに、そんな変わらぬ願いを、拓真の背中に送った。

でも、彼の声は、もう違う人のものだった。

小さくて、弱々しい。

確か、あのとき。
別れるときも、こんな声だった。

「……ダメだ」
「えー?何が?」

「……できない」
「できない?」

「……勃たなかった」

私は、その言葉を聞いて、やっと、正気を取り戻したらしい。

もう力も何も残っていない身体も、勢いよく起き上がらせた。

今は、うるさく残る、内の疼きをもみ消すように、腹をグッと抱えている。

拓真の背中を、もう一度見る、勇気すらない。

(………えっ?いつ?いつから?)

一人だけ、彼を忘れられなくて、一人だけ、まだ彼を求めていた。

いくらお酒のせいで、何もかも分からなくなっていたとしても、そんなつい数秒前までの自分が恥ずかしすぎて、指先にも自然と力がこもる。

花が咲いたのは、私だけだった。

結果はもう出たのだから、私たちがベッドの上で、一緒にいる必要もない。

でも……

とっさに逃げた、あの背中。
あの背中は、どうにかしなきゃ。

何がそうさせているのか、理由すら分からなかったあのときとは違う。

私が、拓真を、そんな背中にさせたんだから。

もう一度。

もう一度だけ、拓真の背中を、見てみる。

やっぱり、あんなに広い背中が、うんと小さく丸まっていた。

(好きな子でもないんだから、勃たないなんて当たり前じゃん……)

私は、必要のない静けさを、正しく壊すように、笑い声を上げた。

「あは、あはははっ……」
「………何だ?今、笑うところか?」
「そうだよ。もう、好き同士でもないんだしさ。普通に正しい結果じゃん。これ」

そして、ベッドから立ち上がると、足元に転がっていたトートバッグを拾い上げ、その明るさを最後まで絶えず続けた。

「じゃあ、私も帰るねーー」

常に新しい風が入ってくる、開けっぱなしドアにまで、強く咎められている気分だ。

足を止めてはダメだと。
振り返ってはダメだと。
彼の前から、早く消えるべき存在なのだと。

その声がもっともだと分かっているのに、毎日履いているスニーカーは、今日に限ってやけに窮屈だ。

(早く、早く……)

玄関扉が、ゆっくりと閉まっていく。
後ろから聞こえた、最後の衝撃音。

でも私は、もうとっくに、そこにはいない。

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