たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「こはりん!!おはよう!!」
「おはよっ!!」
「聞いて、聞いて!ビックニュースだよ!!」
「なになに〜?」
「柳生拓真が!!最優秀助演賞獲ったのよ!!ほら、この席の!」
美琴は真横の空席を遠慮もなくドタドタと大きく叩いている。
(……いや、なんちゅう怪力。それはさすがに、こわれるて)
廊下側の席に集められた生徒は、多忙ゆえにほとんど学校に来ることができない「優等生」たち。
三年間無遅刻無欠席の私はその隣の列で、教師たちも公認のサポート?的な役割を任されていたのだ。
特に、拓真は生徒から「天然記念物」と言われるほど、隣の席の私でさえ一度もその姿を見たことがない。
隙間風が厳しい冬の時期なんかは、右半身が凍え死にそうなくらい、寒くて寒くて仕方なかった。まあ、それが無遅刻無欠席たるものの宿命なのだ。
「もしかして、こはりんはまだ『父子の一生』見てないの?」
「うん。見てないな〜」
「絶対、見たほうが良いから!顔だけじゃなくて、演技もほんっとに凄いんだよ!だって、うちらと同じ十八でさ。あの名優、寺沢昭二の息子役だよ?しかも、ちゃんと張り合ってんの。いやあ、やっぱ日本の宝だわ」
(……近いよ、近いよ、美琴ちゃん、、!ここまでくると、若干の恐怖さえ感じるよ!!)
よほどその映画に感動したのか、今日も駆け出しの女優ゆえの物凄い熱量で、息を吸うことも忘れて、作品の素晴らしさを饒舌に語ってくれる。まるでこちらが食われてしまいそうなくらいだ。
「……はぁ…っ…はぁ…っ……」
(うんうん……息はちゃんと吸いなね?)
「でも、こはりんと柳生拓真って幼馴染?なんだったっけ?」
「……まあ、そうだね〜」
「なら、純粋に作品は楽しめないか……」
「いやあ?どうだろ?わかんないや」
(ギクッ……なんという図星……)
私は小さい頃、あんなに好きだったテレビをあまり見ないようにしていた。
それは、もし拓真の顔を見てしまったら、私の記憶の中にある、あの啜り泣く背中が、また気になり出して仕方なくなるから。
''キーンコーンカーンコーン''
「こはりん、バイバーイ」
「バイバーイ」
終鈴が鳴ると、何かに追われるように教室を出ていく美琴に別れを告げる。
そして、どっさりと荷物が入ったスクールバッグを持ち上げようと、机の横に手を伸ばした。
すると、廊下側の席から一人の生徒がこちらに向かってくる。
「こはりん!こはりん!」
「ん〜?どうした〜?」
「ごめん!今日、このあと撮影でさ……」
(うわあ……この始まりにはめちゃくちゃ覚えがある。くる。これは、くるぞ。)
「……うん!」
「そのー、教室の飾りつけ、卒業まで間に合いそうになくて。残り、お願いしてもいい?」
(そんな子犬みたい目で頼まれたら、断れるわけないじゃん!てか、何?この学校!揃いも揃って、可愛いの乱用はやめていただきたい!!……これが私の役目ならば、喜んでやらせていただきますよ!!)
「……もーう!しょうがないな〜!」
「さすが、こはりん!ほんと助かる!」
恐らくこうしてしっかり話すのも最後になるであろうその子に、渾身のガッツポーズとエールを送った。
「……ファイト!!」
「ありがとう〜!って、こんなことしてる時間ないんだった!」
バタバタと目まぐるしく教室から出ていくその子を、はらはらと、ゆっくり手を振りながら見送った。
「いってら〜〜」
(やっぱり、何かに一生懸命になれるって、素敵だよねえ)
「おはよっ!!」
「聞いて、聞いて!ビックニュースだよ!!」
「なになに〜?」
「柳生拓真が!!最優秀助演賞獲ったのよ!!ほら、この席の!」
美琴は真横の空席を遠慮もなくドタドタと大きく叩いている。
(……いや、なんちゅう怪力。それはさすがに、こわれるて)
廊下側の席に集められた生徒は、多忙ゆえにほとんど学校に来ることができない「優等生」たち。
三年間無遅刻無欠席の私はその隣の列で、教師たちも公認のサポート?的な役割を任されていたのだ。
特に、拓真は生徒から「天然記念物」と言われるほど、隣の席の私でさえ一度もその姿を見たことがない。
隙間風が厳しい冬の時期なんかは、右半身が凍え死にそうなくらい、寒くて寒くて仕方なかった。まあ、それが無遅刻無欠席たるものの宿命なのだ。
「もしかして、こはりんはまだ『父子の一生』見てないの?」
「うん。見てないな〜」
「絶対、見たほうが良いから!顔だけじゃなくて、演技もほんっとに凄いんだよ!だって、うちらと同じ十八でさ。あの名優、寺沢昭二の息子役だよ?しかも、ちゃんと張り合ってんの。いやあ、やっぱ日本の宝だわ」
(……近いよ、近いよ、美琴ちゃん、、!ここまでくると、若干の恐怖さえ感じるよ!!)
よほどその映画に感動したのか、今日も駆け出しの女優ゆえの物凄い熱量で、息を吸うことも忘れて、作品の素晴らしさを饒舌に語ってくれる。まるでこちらが食われてしまいそうなくらいだ。
「……はぁ…っ…はぁ…っ……」
(うんうん……息はちゃんと吸いなね?)
「でも、こはりんと柳生拓真って幼馴染?なんだったっけ?」
「……まあ、そうだね〜」
「なら、純粋に作品は楽しめないか……」
「いやあ?どうだろ?わかんないや」
(ギクッ……なんという図星……)
私は小さい頃、あんなに好きだったテレビをあまり見ないようにしていた。
それは、もし拓真の顔を見てしまったら、私の記憶の中にある、あの啜り泣く背中が、また気になり出して仕方なくなるから。
''キーンコーンカーンコーン''
「こはりん、バイバーイ」
「バイバーイ」
終鈴が鳴ると、何かに追われるように教室を出ていく美琴に別れを告げる。
そして、どっさりと荷物が入ったスクールバッグを持ち上げようと、机の横に手を伸ばした。
すると、廊下側の席から一人の生徒がこちらに向かってくる。
「こはりん!こはりん!」
「ん〜?どうした〜?」
「ごめん!今日、このあと撮影でさ……」
(うわあ……この始まりにはめちゃくちゃ覚えがある。くる。これは、くるぞ。)
「……うん!」
「そのー、教室の飾りつけ、卒業まで間に合いそうになくて。残り、お願いしてもいい?」
(そんな子犬みたい目で頼まれたら、断れるわけないじゃん!てか、何?この学校!揃いも揃って、可愛いの乱用はやめていただきたい!!……これが私の役目ならば、喜んでやらせていただきますよ!!)
「……もーう!しょうがないな〜!」
「さすが、こはりん!ほんと助かる!」
恐らくこうしてしっかり話すのも最後になるであろうその子に、渾身のガッツポーズとエールを送った。
「……ファイト!!」
「ありがとう〜!って、こんなことしてる時間ないんだった!」
バタバタと目まぐるしく教室から出ていくその子を、はらはらと、ゆっくり手を振りながら見送った。
「いってら〜〜」
(やっぱり、何かに一生懸命になれるって、素敵だよねえ)
