たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「……それで……だ……何で、お前を呼び出してまで、こんな話してるかっつうと、だな……」

拓真が、また足首を見始める。
言葉が、急に辿々しくなる。

すぐに、わかった。

これは、ちょっと人には話しずらいことなんだろう。これまでも、何度か、こういうことがあったから。

だから、私は拓真を焦らせない。
エプロンの深紅だけを見つめながら、なるべく、そちらを気にしない。

「その話を……聞いたときにな……お前の顔が、浮かんだんだ」

(………はい?)

私は、また拓真を見るしかなかった。
だって、耳から入ってくる情報だけを取れば、嫌でも、勘違いしたくなる言葉だ。

でも、拓真は、まだ下を向いている。
だから、どんな表情をしているのか、はっきりとは見えない。

なんて返せばいいか、わからない。
そんなとき、いつも私は、こうする。

「……あははっ、あーー、遠慮なく話ができる、ってことね?……」 

すると、拓真も、こっちを見た。

でも、瞬きもしない。
視線もブレない。
口角も上がらない。

「なあ。ちゃんと話さないか」

茶化してはいけない。
低く、重々しい声。

私の口角もヒューっと、下がっていく。

「は、話さないかって、何を?」
「俺たちについて」
「……お、俺たち?」

いつも通り、話しているつもりなのに。
笑えない自分は、こんなにも、声を出すのが下手らしい。

「お前は、どうだった。一ヶ月、暮らしてみて」
「た、楽しかったよ。色々話せて」

「それで」
「み、湊をちゃんと知ろうとしてくれて、嬉しかったなあ、とも」

「あとは」
「……あ、あ、あと?」

また、針の音が、一つ一つはっきりと聞こえる。
でも、今は、鼓動の方が、先へ先へ動いている。

だって、拓真が、間髪入れずに問い詰めてくるから。

なぜか、私は弱い立場になる。
だから、視線もどんどん落ちていく。

「俺はさ、初めて、終わりが怖くなくなった」

私は、また顔を上げた。

恐らく、今はこれ以上ないくらい、目も大きく見開いているはずだ。

「えっ?」

だって、拓真は「終わり」を最も恐れている人なんだから。

「いや、柳生さん。ずっと、終わるのが、怖いって……」

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