たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
私は、やっと、自分の手を見た。
拓真の手が、私に触れている。

考えるより、動きの方が早かった。
手をシュッと、胸に引き寄せた。

頭をブルブル左右に振った。

「……いやいやいやいや……何、突然。プロポーズみたいな」
「プロポーズか……ああ。そうだな。そう受け取ってもらってかまわない」

(か、か、かまわない……?)

私は、もう笑えなかった。
眉間には、思いっきり皺を寄せていた。
それは、とてつもなく、困っていたから。

「……なんで?なんで?私?」

すると、拓真は、また左右離れた太腿の上に、両肘をかけた。

今は、床の木目ばかり見ている。

「なんでか……」

まただ。
だんまりを決め込む。

でも、その横顔は、もう険しくなかった。
目尻には、皺ができてる。
頬もきゅっ、と上がってる。

時折、ははっ……と息をこぼし、唇まで噛み締める。

私が、いつも隠れて、そうしていたみたいに。

「考えたこともなかったな。昔っから、とにかくお前ってやつが、好きだったから。どんな俺を見せても、お前だけは絶対、変わらなかった。俺を見てくれた。それが、嬉しくて」

どんな言葉をもらっても、私の眉間から皺は消えない。

相変わらず、胸が苦しい。
幸せ、すぎるから。

「お前は、もう忘れたか?若い日のことなんか」

痛い。痛い。
もう、痛すぎて、顔も上げれない。

胸に、グッと爪を立てる。
そうやって、痛みに耐える。

こんなにも、幸せをもらっているのに。
私は、頷くことしかできないから。
 
「……そんなの、当たり前じゃん。だから、今こうしていられるんでしょ?」

終わりは、思いがけない時ばかりに来る。

それなら、終わり方くらい、自分で決めさせてほしい。


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