結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「では、朝食はお部屋に運びますね」
 そう言ったエマは、私の髪をきれいに梳かし、邪魔にならないようにとハーフアップにしてくれた。今日は人と会う予定もないから、ドレスも簡素なものだ。
「ありがとう。もし、シオドアが戻ってきているようなら、教えてくれる? 例の誓約書についてさっさと決めておきたいのよ」
「承知しました」
 頭を下げてから部屋を出ていくエマを見送ってから、私はソファーに脱力したように腰を下ろした。
 気持ちが張り詰めていたのだろう。一人になると、なぜか無性に泣きたくなった。それは悲しいからとか悔しいからとかではなく、空しさなのかもしれない。
 なんのために結婚したのだろうと、そんな考えがふっと湧いてくるのだ。
 ポーレット公爵家がこの縁談を望んだのは、ロイル侯爵家の資金狙いだと思っていた。それらしい言動を公爵はにおわせていたが、ロイル侯爵は気づかぬ振りをしてのらりくらり交わしていた。結果、今のところロイル侯爵家からポーレット公爵家への大々的な援助は行われていない。お世話代と称したお金が少々、ロイル侯爵家からポーレット公爵家に支払われたくらいである。
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