結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 ふるふると身体を震わせるエマは、手にしているブラシを折りそうになっていた。
「クズの極みとしか言えないような男です」
「でも、仕方ないわね。彼は私のことをこれっぽっちも愛していないのだから。それはお互いさまよ。だからね、昨夜は口約束で終わったその内容を、きちんと誓約書としてまとめておこうと思ったの。シオドアもそれはいい考えだって賛成してくれたから」
 彼からしてみれば、私が生んだ子を公爵家の跡継ぎだと主張されても困るだろう。
 私からしてみれば、何かの間違いがあって彼に抱かれるのも嫌だった。
「なるほど。それは非常に理にかなっておりますね」
「本来であれば、結婚してからの一か月は蜜月だなんて呼ばれているけれど。シオドアとの関係はそういうものだから、私も自由にやらせてもらうわ。だけど、一応は夫婦だから、表面は取り繕わないといけないでしょう?」
「まかせてください。もし、お二人の関係が不仲だなんて噂が流れたときは、私が別な噂で上書きいたします」
 やはりエマを味方につけたのは間違いではなかった。ただ上書きできるだけの別な噂がどのようなものになるのかは、気になるところだが。
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