結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「こういったことは、できれば旦那様にやっていただきたいのですが……」
 ヘルナントは、長年、ポーレット公爵家に仕えていた家令である。年齢を理由に息子に仕事を引き継ぎ、引退を考えていた彼を、公爵が引き止め、ロンペル子爵家で二年くらい働いてくれないかと打診したらしい。その二年で、シオドアが当主としての役割と責任を身につけるのを期待しているようだが、前途は多難である。
「まずは私のほうでしっかり覚えて、それから旦那様に教えるようにするわ」
 ヘルナントが小さく息を吐いたのがわかった。
「旦那様も幼いころはひたむきな方だったのですが……どうやら学園で悪い遊びを覚えてきてしまったようですね」
「それでもクラス委員として、やるべきことはやっていたのよ? だから、そんなに心配しないでちょうだい」
 あまりに悩みすぎてヘルナントの心労がたたってもよくはない。
 私はシオドアを擁護するような言葉をかけ、執事長を安心させようと試みたが、それがどれだけ効果があったのかはわからない。
 ヘルナントは疲れた笑みを浮かべ、せっせと書類を仕分けしていた。
 と、そのとき、扉をノックする音が聞こえたので返事をすると、エマが書簡箱を手にして部屋へと入ってきた。
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