結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 学年は一つ上で父親は公爵位を持つ彼が、なぜリンダに声をかけたのかがわからない。ただその事実がリンダを有頂天にさせていた。
 シオドアと手を取り合って踊れば、次第に緊張も解れ、親しみさえ湧いてくる。
「どうして、わたしに声をかけてくださったのですか?」
 そう尋ねるだけの余裕すら出てきた。
「君がかわいいと思ったから。それでは答えにならない? せっかくのパーティーだし、どうせならかわいい子と踊って楽しんだほうがいいだろう? 卒業生だって、陰気くさいのはいやだろうし。僕たちが楽しめば、彼らの華やかな門出へとつながるんだよ」
 シオドアの言葉の一つ一つが、リンダの心の中にすうっと溶けていく。
 彼の青く煌めく眼差しが、リンダの身体を火照らせた。
 たった一曲ではあったけれど、それでもシオドアと踊った時間は、リンダにとっては夢のような時間で、むしろこの時間が永遠に続けばいいのにと、そう願ってしまうほど。
 シオドアと手が離れてしまうと、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような寂しさに襲われた。
「リンダさん、うらやましいわ」
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