結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「えぇ、そうね。だからポーレット公爵家がロイル侯爵家に縁談を打診したものだと思っていたわ。そのかわり、こちらは財務大臣への力添えを期待していたわけど」
「それで、君がポーレット公爵家に嫁いで、実際はどうだった?」
 アーヴィンは底光りするような疑いの眼差しを見せた。
「そうね。ロンペル子爵領に関しては、私のほうでも帳簿を確認したけれど……これといって困窮しているようには見えないわ。むしろ、あの領地の規模に対しては収入がよいのよ。私、感心してしまったわ。きっと領民に恵まれているのね」
「イレーヌ。それを五年分、確認できるか? できればポーレット公爵家の収支。もし無理ならロンペル子爵領の分だけでもかまわない」
「えぇ。ロンペル子爵の分ならすぐに確認できる。だけど、公爵家のほうは……ちょっと難しいかも。もしかして、そこにあなたがトリアスに行った件と関係があるの?」
「それはまだわからない。可能性の話をしているだけで。不確かな情報を与えて、君を混乱させたくない。だけど、ロイル侯爵家は悪いようにはしない。それだけは覚えておいてほしい」
 私は小さく頷き、カップに手を伸ばした。胸につかえたもやもやも一緒に流し込むように、紅茶をコクリと飲んだ。
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