結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 私が冗談めかして言えば、アーヴィンは呆れたように肩をすくめる。
「俺だって欲はある。だけど、それは国王になりたいとか、そういったものじゃない。どちらかといえば……」
 そこでアーヴィンは、やわらかな紫眼を向けてきて、私の視線を絡めとった。
 互いに言葉を呑み込み、風に揺れる草花の音が耳を通り過ぎていく。生ぬるい風が庭園の香りを運んできて、この場をいっそう甘くする。
 しばらく言葉もなく、互いの鼓動が聞こえるのではないかと思えるくらい、二人で見つめ合っていた。
 その羞恥に先に負けたのは私だ。弾かれたように顔をそむけ、口を開く。
「それで? 他の国をぶらぶらとしただけの成果は得られたの?」
「当たり前だろ? 君は不思議に思ったことがないかい?」
「何を?」
 脈絡もなくそのようなことを尋ねられても、なんのことやらさっぱりわからない。
「ポーレット公爵だよ。資金繰りが悪化しているという噂を聞いたことはないか?」
< 187 / 196 >

この作品をシェア

pagetop