結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 できれば一緒に並んで歩きたくないと思ってしまうような姿だけれど、中身がアーヴィンだとわかればその気持ちも薄れていく。
「イレーヌだって、その辺の町娘と変わらない。ここはおとなしく俺にナンパされたってことにしておけばいい」
「そうね、せっかくのダブルデートかと思っていたけれど……私は、遊び人にナンパされた町娘ってことね。あっちの二人は恋人同士みたいだけど」
 揃いの服を着ているエマとマルクスを見やると、二人は肩を丸めている。
「しまった、イレーヌはそう考えていたのか。失敗したな」
 アーヴィンは悔しそうに顔をしかめたが口元がにやついており、それが心からの気持ちには見えない。つまり彼は、この状況を楽しんでいる。
「まぁ、いいわ。あなたが魅力的だから、ナンパされたことにしてあげる」
「そうか。だったら、お嬢さん。名前を教えてくれないか?」
「失礼な方ね。人の名前を尋ねるなら、まずは自分から名乗ったらどう?」
 後ろでマルクスがヒヤヒヤしながら私たちを見守っているのは、やはりアーヴィンの身分が原因だろう。
< 228 / 233 >

この作品をシェア

pagetop