結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 しれっと答えるアーヴィンが憎らしく見える。
「以前の……テロス展を一緒に見に行ったときのドレスも似合っていたが……はっきりした色合いのものも似合うな」
 私が卒業パーティーに選んだドレスは鮮やかな赤のドレスだ。胸の下の切り替えから自然と流れるようなスカートは、装飾は控えめだが金色の刺繍で小ぶりの花模様が描かれている。
「ありがとう。あなたも素敵だわ。王子様みたい」
 冗談めいた口調で言えば「本物の王子様だが?」と、揶揄いを含ませて答えてきた。
 私とアーヴィンが並んで歩くだけで、感嘆の声が聞こえてくる。それはきっとアーヴィンに向けられたものだろう。制服姿と異なる彼の姿は見慣れないもので、気を抜けばうっとりと見惚れてしまうくらい。それはそれで悔しいので、なんでもない振りをする。
「やぁ、お疲れ様」
 円になって集まる後輩たちに、アーヴィンは片手をあげて陽気に声をかけた。
「アーヴィン先輩、イレーヌ先輩も……」
 今まで泣きそうなくらい不安げな顔をしていた現生徒会長のマティウスが、アーヴィンの姿を見たとたん、その表情をぱっと輝かせる。
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