青い青い空

 それから、箍が外れたように由良野は私のことを褒めちぎった。仕事が遅いわけじゃない。丁寧なだけだと。要領が悪いことは決して悪いことじゃない。それだけ慎重だからこそ、ミスの少なさに繋がるのだと。


「ま、正社員になったら大変だろうね」

「今とは比べものにならないと言うことは想像尽きます」

「青崎さんがじゃなくて、今まで青崎さんに頼ってた奴らの話」

「どういう意味ですか?」

「これからは朝、誰もコーヒーと一緒に軽食も持ってきてくれないし、青崎さんの作ってくれる資料は当然ない。黙ってやってくれていた雑用も部署のゴミも溜りに溜り、挙げ句の果てには足の踏み場もなくなると」

(だ、黙ってやってもここまでバレてる)

「非常に残念だけど、知らない奴らに一度思い知らせたかったら正社員になるのも十分ありだよ」

「そ、そんなことは決して」

「絶対泣き付かれて、正社員になっても今の仕事の延長してそうな未来が見えるよね」

「あはは。……もしもそんな風に言ってもらえれば嬉しいですね」


 はてさて、そう言ってくれる人が、一人くらいはいてくれるだろうか。


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