青い青い空

 素っ気ない反応。だけど、彼の表情はとても穏やかで。

 だからか、やっぱり胸が苦しくなる。


「絵を描くために、家を出て行くんだね」


 思っていた以上に、か細い声が漏れた。もしかしたら、料理をしている彼には届かなかったかも知れない。それならそれでいいと思った。


「治んねえなら変えりゃいいじゃんって、思ったわけよ」

「変えるって、何を?」

「……世界?」

「お、大きく出たね」

「それぐらいしたって罰は当たんねえだろ。先にお前を苦しめたのはこの世界なんだし」

「……宵くん」


 けれど急に照れくさくなったのか、睨み付けてきた宵は「広げた絵片付けねえと飯食わせないからな」と、それ以上自分の思いを話すことはなかった。


「不思議だね」

「何が」

「どうして、宵くんが描いてくれたら色が見えるのかなって」

「んなこたどうだっていいんだよ」


 そう言って、彼は嬉しそうに笑った。

 どんな方法であろうと、お前に綺麗な世界を見せられるなら、俺はそれが本望だからと。


< 561 / 650 >

この作品をシェア

pagetop