泡のような世界で君と恋をする
声は、泡にならずに空気を震わせた。

ここがどこなのか、分からない。
でも、少なくとも――人間の世界じゃない。

立ち入り禁止海域。
最後に見た、黒く渦を巻く海面が、遠い夢みたいに思い出される。

あの場所で、海は静かすぎた。
波があるはずなのに、音だけが消えていた。
――境界が、揺れていた。

あの違和感と、今、胸の奥に残る軋み。
形は違うのに、どこか、似ている。

あの場所に、戻ろうと思えば戻れるのだろうか。
そう考えた途端、胸がきゅっと縮んだ。

戻る、という言葉が、ひどく現実味を失っていた。

部屋の外から、気配がする。
声はないのに、視線だけが、薄い膜越しに伝わってくるような感覚。

――見られている。
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