泡のような世界で君と恋をする
そして――

「生きている」

理由はひとつ。

初めて澪の手を取った時から、
ルシアの中に残っていた微かな感覚。

胸の奥の振動に、幼い日の記憶がひらめく。
初めて境界の歪みを感じたときの、恐怖と好奇。
――あの感覚と同じだ。

王家にのみ伝わる、共鳴。

「……私の声は、まだ届いている」

誰も、否定しなかった。

「行くぞ」

静かで、鋭い声。

「水の外では、あまりにも脆い存在だ。」
「澪を、必ず連れ戻す」




檻の中。

澪は、静かに目を閉じる。

(……信じてる……)

その想いだけが、
闇の中で、確かに灯っていた。
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