泡のような世界で君と恋をする

第10話 それぞれ

――人間として

私は、客殿の小さな水槽庭を眺めていた。

人魚の居住域とは違い、
ここは流れが穏やかで、深さもない。
――人間が溺れないように、作られた場所。

(……配慮、なんだろうけど)

そう思えば思うほど、
自分が「守る対象」でしかないことを突きつけられる。

食事は運ばれる。
寝床も整えられている。

でも、誰も長くは留まらない。

「……ルシア」

名前を呼んでも、
返ってくる“感覚”はない。

(前は……呼ばなくても、分かったのに)

胸の奥が、ひりつく。

――共鳴がなくなった。

そう、頭では理解し始めていた。
でも、それが何を意味するのかは、まだ分からない。

「人間だから、仕方ない」

そう言われたわけじゃない。
ただ、そう扱われている。

私は、ぎゅっと拳を握る。

(……それでも)

守られるだけで、終わりたくなかった。
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