泡のような世界で君と恋をする
――王として

夜の回廊。

僕は、ひとりで歩いていた。

玉座に座っている時間より、
こうして歩いている時間の方が、今は息がしやすい。

「……孤立、か」

誰に言うでもなく、呟く。

共鳴を封じたことで、
長老たちは彼を“安全な王”として扱うようになった。

だが同時に、
“危うい個”として、距離を置いた。

(当然だ)

そう思う。

王家の力を私情に使った。
それは、事実だから。

「それでも――」

足が止まる。

胸の奥に、ぽっかり空いた場所がある。

澪の気配を、探してしまう自分がいる。

「……王失格だな」

そう呟いた瞬間。

「それ、本人に言ってる?」

背後から、声。

振り返ると、セリオがいた。
少し遅れて、カインとミルルも姿を現す。

「また集団で来たのか」
「僕に対して不敬だぞ」

皮肉めいた言い方。

「今は“王”じゃなくていい」
セリオが言った。

「俺たちは、ルシアに用がある」

沈黙。

ルシアは、しばらく迷ってから――
小さく、頷いた。
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