泡のような世界で君と恋をする
客殿の淡い光の中で、私は静かに思い出す。

――小さな町の海辺。
いつもひとりで遊ぶ波打ち際。
笑い声も、誰かの手もない。
ただ、潮の匂いと、遠くで揺れる灯台の光だけが相手だった。

ある日、黒く渦巻く海の深みに足を踏み入れた。
息ができず、身体が重くなる。
それでも、胸の奥で何かが囁くように感じた。
「大丈夫」と、誰かが言ってくれるような感覚。
その時、海は単なる水ではなく、自分を受け入れる場所でもあることに気づいた。

――それが、今の共鳴の原型だったのかもしれない。





同じ夜。王国の回廊で、ルシアもまた過去を思い返す。

――幼い頃、境界の揺れに初めて気づいた夜。
他の子どもには見えず、誰も理解してくれない。
恐怖で胸が締め付けられたが、好奇心もあった。
その揺れを見逃さず、理解しようとした経験が、今の判断力に繋がっている。

王として孤立していたあの頃。
選択の責任を一人で背負ったあの瞬間。
すべてが、今、澪を救おうとする力になっている。
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