鈴村君の裏の顔
第2話 俺様発動
三上望愛が家政婦として
やって来て3日目。
朝のリビングは、
いつもと変わらないはずだった。
今日は、昼からバラエティー番組の
収録がメンバー全員入ってる。
ソファに腰を下ろし、
今日のバラエティの台本に目を落としながら、
俺はコーヒーを口に運ぶ。
——なのに。
……なんだよ。
視界の端が、やけにうるさい。
キッチンに立つ、三上望愛。
エプロン姿で、
慣れた手つきで洗い物をしている。
別に、特別なことは何もしていない。
愛想よく振る舞うわけでもないし、
必要以上に話しかけてくることもない。
それなのに。
目、離せねぇんだけど……
理由は分からない。
今まで何人も、
こういう“寮に出入りする女”は見てきた。
媚びてくる奴。
距離を詰めようとする奴。
アイドルだと知った瞬間、
態度が変わる奴。
でも、三上望愛は違った。
望愛
「……完成っと。」
小さく呟いて、
料理をテーブルに並べるその横顔は、
どこまでも自然で、気負いがない。
……何だよ、それ
自分のことを特別扱いしない視線。
MOONのセンターを見ているはずなのに、
そこにあるのは“人としての距離感”だけ。
それが、妙に癪だった。
なんだよ……俺に興味がないのかよ。
そして——。
優希
「望愛ちゃん。」
その名前を呼ぶ声。
俺の視線が、
自然と優希の方に向く。
優希が、キッチンに立っていた。
優希
「これ、ありがとう。」
「美味しそう!」
柔らかく笑う優希に、
三上望愛は少し照れたように答える。
望愛
「いえ、皆様の」
「口に合えばいいんですけど。」
その空気。
……は?
隼人の中で、何かが、かちりと音を立てた。
なんで、そんなに距離が近い。
会話が、自然すぎる。
初対面のはずの家政婦と、
クール担当の優希が、
まるで前から知り合いみたいに話している。
胸の奥に、
理由のわからないざらつきが広がる。
優希が、あんな顔する相手……。
自分でも、驚くほど、苛立っていた。
その瞬間……俺の中で、
“王子様”のスイッチが、静かに切れた。
隼人
「おい!……三上望愛。」
低く、はっきりした声。
呼ばれて、三上望愛が振り返る。
望愛
「はい?」
「なんでしょうか?」
その瞬間、俺は気づいた。
あ、これ、ダメなやつだ。
やってしまった……。
彼女の目が、
ほんの少しだけ、警戒するように揺れた。
でも……もう遅い……。
隼人
「今日の掃除、ここまででいい。」
望愛
「え……でも、まだこれ残っ」
隼人
「俺がそう言ってる。」
言い切る声。
自分でも分かる。
言い方が、きつい。