鈴村君の裏の顔
「ここがね、一番好きなの!」
そう言って、無邪気に笑っていた自分。
その隣で、
静かにページを覗き込んでいた男の子。
「もしかしてあの……」
「一緒に、ドクター忍者の漫画」
「読んでた樋口君?」
思わず、そう口にしていた。
彼は、ほっとしたように、
優しく笑った。
優希
「やっと、思い出してくれた!」
その笑顔は、
まるで王子様みたいに、
甘くて、柔らかかった。
……全然、違う
さっきまでのクールな雰囲気が、
嘘みたいだ。
優希
「急に大人になってて、ごめん(笑)」
冗談みたいに言いながら、
彼の声はとても穏やかだった。
優希
「芸能界に入ってから、」
「クールという態度が」
「癖になっちゃってさ。」
望愛
「……そう、なんですね。」
まだ少し混乱している私に、
彼は視線を合わせて、
ゆっくり言った。
「でも、君の前では……」
「昔のままでいたんだ。」
胸が、きゅっと締めつけられる。
優希
「望愛ちゃん。」
最初の呼ばれた時より、
今、名前を呼ばれたその呼び方が、
あまりにも自然で、
懐かしい……。
クールでも、
近寄りがたい人でもなかった。
クールと言うか静かで、優しくて、
私の話を、最後までちゃんと
聞いてくれる男の子だった。
望愛
「……優希君。」
そう呼ぶと、
彼の目が少しだけ
驚いたように揺れたあと、
すぐに優しく細められた。
優希
「その呼び方、久しぶりだね。」
小さく笑う。
その空気は、
まるで時間が、あの頃に戻ったみたいだった。
キッチンの窓から、午後の光が差し込む。
優希
「……ここで会えるなんて、」
「思ってなかった。」
彼はそう言って、
少しだけ照れたように視線を逸らした。
優希
「でも、会えてよかった!」
その一言が、
胸の奥に、静かに落ちる。
この瞬間、私は気づいていなかった。
王子様の仮面を持つ人と、
本物の王子みたいに優しい人。
その二人の間で、
私の物語が動き出したことも——。
第1話 ハプニング 終わり