鈴村君の裏の顔

望愛
「えっ……?」
「あっ……隼人君、断ったら」
「凄い怒りそうでしょ?」
「そーゆのちょっと困るので」
「だから、私は最初から」
「断わらず応じる事にしたのです。」


優希
「俺のを断ったのは、」
「俺の事が、嫌からではないって事?」


望愛
「えっ!?」
「なんで私が、優希君を嫌になるんですか!?」
「嫌になる理由なんてないですよ。」


優希
「それなら良かった……。」


望愛ちゃんに嫌われるなんて……
想像しただけでこの世の終わりだ。

まぁ……隼人送るのを受けたのは、
隼人に断るとしつこいからと理由も
分かったから少し安心した。

本当……俺……どこまで独占欲が強いんだ。

って言うか……
敬語やめて欲しい……。
仕事だから仕方ないとわかるけれど……。
せめて仕事終わってからでも良いから
タメ口で話して欲しいとまた、
俺の悪い性格……なんでも次に欲が出てしまう。



優希
「望愛ちゃん、」
「敬語は辞めて欲しい。」


望愛
「えっ……でも……仕……」


優希
「仕事中は仕方ないとして……」
「せめて、仕事以外は普通に」
「タメ口にしてよ。」


優希君が潤んだ瞳で見つめてくる。
今日の優希君……どうしたの?
だって……私が国民スーパーアイドルに
タメ口なんて……恐れ多いよ。
だけど……それが優希君を不安に
させてるのであれば解放して上げたいと
思ってしまった。


望愛
「優希君……わかった。」


優希
「ありがとう!」
「望愛ちゃん!」


優希君は、私が応えた返事に
見る見るうちに顔が明るくなり、
満面の笑みを見せてきた。


その横では、森下君と宮部君は
良かったなっと言う表情で。
優希君の頭を撫でていた。






───隼人の部屋


ドアが閉まった瞬間、
部屋の中に、静寂が落ちた。

「……はぁ」

俺は、髪を軽くかき上げ、
壁にもたれるようにして
ゆっくり息を吐く。

リビングでは、
いつものメンバーの声がしていたはずなのに、
ここだけ、まるで別世界だ。

……やっべぇな。

頭の中に浮かぶのは、
さっきまでの光景。

エプロン姿の望愛。
少し困ったような笑顔。
隣に座る優希。

……チッ

無意識に、舌打ちが漏れる。



なんで、優希の前で
あんな自然に笑うんだよ……。

誰にでも向ける笑顔なのに、
なぜか、優希にだけに向けて
自分には向けられていない気がして、
それが腹立たしかった。

ベッドの端に腰を下ろし、
再び前髪をぐしゃっとかき上げる。


俺はもう、無性に沼るぐらい
自分が、望愛のことを好きすぎるって
事が自覚した。

最初から気づいた瞬間から、
抑えるつもりもなかった。


でも……

俺に付いてくるもの……
立場、立場、立場……

アイドル……
センター……
事務所の顔……

頭では分かってる。


下手な行動は、
全部を壊しかねない。
それは、俺だけではなく
メンバーにも影響を及ぼすし、
迷惑かけてしまう。

その事も、
頭では痛いほど理解できている。

――それでも。

送るくらい、良いだろ……。

夜道だ。
しかも、相手は女の子。
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