鈴村君の裏の顔
望愛
「すごい……」
「ほんとに、誰だか」
「全然分からないですね。」
純粋な感想だった。
だけど、それでもやはりルックスが
良すぎる分、鈴村隼人とわからないに
しても、オーラが漏れていた。
そんな私のリアクションを隼人君は、
楽しむように、口角を少し上げる。
隼人
「だろ!」
「正しい反応だぜ。」
隼人君が、
マスクの下で笑っているのが、
なぜか分かる。
隼人
「これなら、普通に歩ける。」
隆二
「うん、完璧じゃん!」
隆二が関心しながら隼人に言う。
隆二
「これなら、本当、誰も気づかなぇな」
優希
「……隼人。」
優希が、俺の肩を叩き
静かに声をかけた。
優希
「望愛ちゃんの事頼む。」
短い言葉で優希は言う。
でも、そこには
色んな意味が詰まっていた。
隼人
「分かってる。」
俺は真っ直ぐ優希を見て答えた。
挑発でも、敵意でもない。
ただ、俺に任せろと言う意味を込めて。
隼人
「望愛、そろそろ行くぞ。」
そう言って、俺は望愛の方を見る。
望愛
「はい。」
望愛は慌てて返事をし、
小さく頭を下げる。
望愛
「それじゃ、失礼します。」
隆二
「おう!またな!」
隆二が手を振る。
翔太
「気をつけて!」
翔太が最後に言った。
玄関のドアが開き、夜の空気が流れ込む。
私は外へ一歩出る直前、振り返ると
3人はアイドルスマイルで私を見送ってくれた。
ドアが閉まり、
鍵の音が静かに響く。
残された玄関に、一瞬の沈黙。
隆二
「やれやれ……」
隆二が深い息を吐く。
隆二
「完全に、始まってんな。」
翔太
「だな……。」
翔太は小さく頷いた。
翔太
「完全なる三角関係だわ。」
俺は、隆二の言葉も、翔太の言葉にも
何も言わず、閉まったドアを見つめていた。
……行くな、とは言えなかった。
今更、胸の奥がざわつく。
そして、翔太の言葉” 三角関係”
その言葉に、俺の肩がほんのわずかに揺れる。
隆二
「なぁ……優希。」
隆二が、少し声のトーンを落とす。
隆二
「お前、もう知ってるんだろ?」
俺は答えない。
それでも、視線はドアに縫い止められたまま。
隆二
「隼人も……」
隆二はお構いなしに続ける。
隆二
「三上さんのこと、」
「ただの“世話係”だなんて」
「思ってない事くらい。」
優希
「……」
隆二
「そして、優希……お前もだ。」
その言葉に、
ようやく俺はゆっくりと顔を上げた。
2人に話さないといけない。
優希
「……分かってる。」
自分でも驚くほど
低く、掠れた声が出ていた。
優希
「分かってるけど……」
言葉が、途中で止まってしまう。
翔太が、
俺の表情をじっと見つめる。
翔太には既に見透かされてるようだ。
翔太
「……優希」
「かなり、無理してる顔だよな?」
一度ぎゅっと唇を噛んでから、
力なく笑った。
優希
「……正直さ……」
俺の笑顔は、
オフの時の王子みたいな余裕とは
程遠かった。
優希
「望愛ちゃんのこと考えると……」
「おかしくなりそうなんだ……。」
隆二と翔太が、
同時に息をゴクリと飲み込むのが
わかった。