鈴村君の裏の顔
*隼人 side*
──家政婦が来る朝
朝の光は嫌いじゃない。
カーテンの隙間から差し込む白い光が、
今日も俺の部屋を均等に照らしている。
ベッドの上で上半身を起こし、
スマホを手に取る。
通知は相変わらず多い。
仕事、SNSなど……
……はいはい。
無意識に“王子様用”の
表情を作りそうになるのを、
ふっとやめた。
ここは寮。
カメラも、ファンもいない。
「……だる」
低く呟いて、ベッドから降りる。
洗面所の鏡に映る自分は、
ステージの上の俺とは違う顔をしていた。
今日から新しい家政婦、だっけ。
リーダーから聞いた話を思い出す。
社長の身内絡みだっけ……
一般人で……
住み込みではなく通い。
正直、どうでもいい。
今まで何人もスタッフを見てきた。
緊張して、遠慮して、
勝手に期待して、勝手に幻滅する。
どうせ、またそのパターンだろ。
リビングに行くと、
すでに隆二がソファでスマホをいじっていた。
隆二
「おはよー、隼人。」
隼人
「おはよ。」
コーヒーの匂い。
翔太がキッチンに立っている。
翔太
「今日から新しい」
「家政婦さん来るからな。」
隼人
「知ってる。」
返事は適当。
どうせ、俺の“裏の顔”見て固まる。
それが少し、退屈だった。
期待されるのも、
理想を押し付けられるのも、
もう慣れすぎた。
翔太
「ちゃんと愛想よくしろよ。」
翔太に言われて、口角を上げる。
隼人
「リーダー、分かってて言ってんの?」
「俺の得意分野だから大丈夫。」
そう言いながら、内心では冷めている。
王子様ごっこ……ね。
ふと、窓の方を見る。
優希が、何も言わずに外を見ていた。
あいつ……朝から静かすぎないか?
いつも口数少なくて大人しいけど……
今日は、少し違う雰囲気をかも出していた。
隼人
「優希、なにしてんの?」
声をかけても、反応が一拍遅れる。
優希
「……別に」
短い返事。
なんだそれ……
その時、インターホンが鳴った。
——ピンポーン。
空気が、ほんの一瞬変わる。
家政婦が来たか……
無意識に、スイッチが入る。
背筋を伸ばし、
口元に“完璧な微笑み”を作る。
さあ、今日の役目だ。
でも、なぜか……
胸の奥で、ほんの少しだけ……
……”退屈じゃないといいけど”
そんな感情が、かすかに動いていた。
隼人 side 終わり