鈴村君の裏の顔
隆二
「へぇ……今日、
「現場同行なんだ。」
宮部君が軽く口笛を吹く。
翔太
「三上さん、大変そうだね」
森下君は柔らかく笑いながらも、
どこか興味深そうに言う。
その横で……
隼人君と優希君は、
特に何も言わなかった。
けれど……
隼人君は一瞬だけ、
私を見てから視線を逸らした。
……?
まただ……。
最近一瞬見てきて、すぐ視線を逸らす。
これは一体なんでだろう……。
ちょっと……現場、連れてく気かよ。
もし、他の奴らに目つけられたら
どーすんだよ。
俺はそう思いながら優希の方を見た。
優希は、静かに拳を握っていた。
俺は望愛が……
知らない世界に、
連れて行かれる感じがして胸の奥が、
少しだけざわつく。
こうしてやがて、準備が整い
全員でワゴン車に乗り、
撮影現場へ向かった。
━━移動中の車内
そこにいるのは、
いつもの寮の空気と同じ
オフの顔のMOON。
隼人
「今日、寒くね?」
翔太
「昨日よりマシだろ。」
隆二
「腹減ったなー」
優希
「隆二…さっき、」
「あんぱん食べてたじゃん。」
そんな何気ない会話が飛び交う。
隼人君はスマホをいじりながら、
いつもの俺様口調。
優希君は、リラックスした表情で、
私ににちらりと視線を向ける。
優希
「……緊張してる?」
望愛
「え? あ、ちょっと……」
「緊張しちゃってます。」
優希
「大丈夫だよ。」
「裏方だし、無理しなくていいからね。」
その声は、
仕事中のクールさとは違う、
優しいトーンで言ってくれた。
……今は、普通の男の子なんだなぁ。
私は、そう思った。
けれど……
現場に到着し、楽屋に入った瞬間。
空気が、一気に変わる。
衣装に着替え、
ヘアメイクが入り、
スタイリストが最終確認をする。
一人、また一人と、みんな
“スイッチ”が入っていく。
鏡の前に立った隼人君は、
背筋を伸ばし、顎を上げる。
その瞬間……
「……っ!!」
思わず、私は息を呑んだ。
さっきまでの俺様な彼は消え、
そこにいたのは、
誰もが見惚れる“王子”そのものだった。
それはもちろん、優希君も同じだった。
無駄な表情を削ぎ落とし、
静かで近寄りがたい、
完璧なクール担当に切り替えていた。
森下君は爽やかな笑顔を纏い、
リーダーの凛々しい姿になっていた。
宮部君は余裕ある色気を放ち
普段とは全然違うセクシー差を
放っていた。
……すごい、凄すぎる。
プロの世界だ……。
同じ人なのに……
さっきまで隣で話していたのに。
オンとオフの差が、こんなにも……
私は、あまりにも凄すぎる迫力に
ただ立ち尽くす。
撮影現場の空気は、
張り詰めていた。
スタッフ
「はい、スタンバイお願いしまーす!」
スタッフの声が響くたび、
時間がきっちりと区切られていく。
私はというと……
マネージャーに指示された通り、
インタビュー用の台本や
ペットボトル、タオルをまとめて抱え、
必要な場所へ小走りで向かっていた。
ひゃー!!
……思ってた以上に、忙しい!!
でも、不思議と嫌じゃないんだよね。
誰かの役に立っている感覚が、
胸の奥を少しだけ温かくする。
こーゆ仕事好きかも。
スタッフ
「三上さん、次こっちお願い!」
望愛
「はい!」
返事をして振り向いた、
その瞬間……
視界の端に、
“仕事中の隼人”君が目に入った。
照明を浴び、
カメラの前に立つ隼人君。
完璧な笑顔。
一切の隙がない立ち姿。
隼人君……やっぱり、すごいなぁ。