鈴村君の裏の顔

由佳
「……え、なにそれ。」

由佳の声が、みるみる興奮してる
ように聞こえる。

由佳
「運命じゃん!」

目をキラキラさせながら言われたその一言に、
私は「え?」と首を傾げる。


望愛
「そ、そんな大袈裟な……。」


望愛と佐々木さんのやり取りに
俺は何も言わず、
ただ静かに視線を落としていた。

望愛から発せられた……

”再会、しちゃった”

望愛のその言い方が、
胸の奥に、静かに沁みていく。

だけど……佐々木さんが言った、
”運命じゃん”に望愛は大袈裟なと
返した言葉は、俺の心にザクッと
刺さる。



私は、望愛と優希君を交互に見つめてから
ふっと、表情を変えた。

さっきまでの興奮が嘘みたいに、
急に落ち着く。


……あー、なるほど。

私は心の中で呟く。

これって……完全に……。


優希君の視線は、
常に望愛を追っているのが
みえみえで……

距離も、間も、無意識に近い。

これ、ただのアイドルと
家政婦の距離じゃない。

しかも……望愛は絶対、
優希君の好意に気付いてない。


確信した私は、
わざと明るく声を上げた。

由佳
「あっ、そうだ!」
「私、ちょっと用事思い出しちゃった!」

望愛
「え!?」
「用事あるの……?」

望愛が言いながら驚いて私を見る。

由佳
「ごめんね望愛!」
「ここまで一緒に来れて満足したし!」

私は、この状況の嬉しさを隠しきれず
ニヤつきながら言った。

私の大好きな推しの優希君が、
私の大切な親友の事が大好きで、
この二人がくっつけば、最高じゃん!
そう思うだけで、ニヤけてしまう。

由佳
「それに……」

ちらっと私優希君を見る。

由佳
「この後は、二人で」
「話した方が良さそうだし!」
「あっ……後、この事は誰にも」
「言わないから安心してね!」

優希
「佐々木さん、色々ありがとう。」


望愛
「え、ちょ……!!」


望愛が私の手を掴んで止める前に、
由佳は一歩下がって手を振った。

由佳
「じゃ!」
「そーゆー事だから!」
「望愛、また後で連絡する!!」
「またねー!」

そう言い残して、
公園の出口へと小走りで去っていく。

残されたのは――

私と、優希君。

夕方の風が、
二人の間を静かに通り抜けた。



「……行っちゃったね。」

望愛が、少し困ったように言う。

俺は、佐々木さんの背中が
見えなくなるまで見送ってから、
ゆっくりと視線を望愛に戻した。


佐々木さん機転を利かせてくれて
……ありがとう。

胸の奥で、
佐々木さんにそっと礼を言った。

――ここからだ。

夢を現実にしないために。

俺は、小さく息を吸い込んだ。

この時間を、絶対に逃さない。



公園に、静けさが残る。

佐々木さんの姿が完全に見えなくなってからも、
しばらく俺達はその場に立ったままだった。


夕暮れの空は、
オレンジから群青へとゆっくり色を変え、
ブランコが風に揺れるたび、
”きーぃ”、と小さな音を立てる。

優希
「……。」


望愛
「……。」



沈黙が続くでも、重くはない。

ただ――
俺だけだけが、異様なほど落ち着かない。

やばい……静かすぎる。

静かすぎるせいなのか胸の奥が、
どくどくとうるさい。
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