鈴村君の裏の顔

「小学生の頃から……」
「俺、望愛のことを」
「“大切な友達”ってだけじゃ、」
「見れてなかったんだ。」

柔らかいはずの声が、
まっすぐ私の胸に刺さる。

「望愛の事……女の子として、」
「ずっと好きだった。」
「再会してからもさ……」
「また友達に戻れただけで、
「じゅうぶんだって思おうとした。」


公園の木々が、ざわりと揺れる。
私は、言葉を失ったまま立ち尽くす。

ちょ……ちょっと待って……
今、私の事好きって優希君が言ったの?
えっ……?小学生の時からって事?
突然の告白で、私は混乱していた。

そして……
優希君はそのまま言葉を切る。


「それでも、無理だった。」

優希君の視線が、私を捉える。


「……っつ!!!///」


逃げ場のないほど、真っ直ぐで、
優しい目。


「望愛が笑うたび」
「誰かと話してるだけで」
「……心臓、うるさくなる」
「誰かに取られたくない……。」


私は、息の仕方を忘れていた。



「笑うところも、真面目なところも、」
「ちょっと鈍感なところも……」

声が、少しだけ柔らかくなる。

「全部ずっと、」
「独り占めしたいって思ってた。」


その一言で、私の心臓が再び跳ねる。


「……だから……」

俺は一歩、距離を詰める。


「俺の彼女になって欲しい。」

その瞬間――
私が反応する前に、優希君の腕が伸びてきた。


そっと優しく……でも迷いのない動きで、
望愛を胸に抱き寄せる。

「っ……!」

私の視界が、一気に優希君で埋まる。

心臓の音が、耳の奥でうるさい。

「ゆ、優希く……!」

顔が、熱い。
自分でも分かるくらい、赤くなっている。

突然のことに、手が宙に浮いたまま動かない。

優希君の腕は、強すぎない。
でも、離す気はない、
という確かな力があった。


「……驚かせてごめん。」


耳元で、低く囁かれる。

「でも、ずっと伝えたかったから」
「言わせてほしかった。」

しばらくして、
俺はゆっくり腕を緩めて、
望愛を解放する。


望愛は、すぐに一歩後ずさる。



「……っ、ちょ、」
「ちょっと待って……。」


私の頭、まったく追いつかないんだけど!
ウソ……優希君が私を……すっ……好きって
これ……現実?


「え、えっと……」
 「びっくりしすぎて……」


そう言って望愛は両手で頬を押さえる。
その仕草もたまらなく愛おしい。


びっくりするだけじゃダメたよね……
ちゃんと私の正直な気持ちを
伝えなきゃ……。

優希君のまっすぐな気持ちを
一生懸命話してくれてんだもん。


「優希君は……大切な友達だし……」


私は言葉を選ぶように、
ゆっくり続けて話す。


「それに……優希君は、」
「みんなのアイドルで……」

視線が、下に落ちる。

「私なんかが……って思うし……」

俺の表情が、ほんの一瞬だけ曇った。
そして俺は無意識に言ってしまう。

「……俺のこと、嫌い?」

その問いに、望愛は勢いよく顔を上げる。

「ち、違う!」

私は思わず、声が大きくなる。
優希君の事嫌いになるはずないじゃん!

「嫌いだなんて……1ミリも思ってない!」

必死に否定する望愛の姿に、
俺は目を細めた。

「本当に?」

俺が不安な気持ちが隠しきれて
いなかったのが、望愛に伝わって
望愛は再び大きな声で返答する。


「本当だよ!」

望愛は即答だった……
その反応に、
少しだけ安心したように、
俺は息をつく。

そして、間を置いて、静かに聞いた。


「……じゃあさ」

「望愛には、好きな人いる?」

公園の時計の針が、
カチリと音を立てた気がした。



私は、言葉を探すように黙り込む。

優希君からの突然の問に

胸の奥が、ざわざわする。

好きな人……

頭に浮かぶ顔があるような、
ないような感じがもどかしい。

自分でも、よく分からない。


「……いない、よ。」

少し間を置いて、そう答えた。

嘘ではなかった。
少なくとも、はっきり
「好き」と言える相手はいない。


その答えを聞いた瞬間――
俺の目に、確かな光が宿る。

望愛自身が、隼人の事好きな事すら
気付いてないのを俺は
いい事のようにずるい質問をして……
案の定、望愛は”いない”と言うのは
分かってた。

実際、彼女からの返答を聞くと……
例え、自覚のない返答だったとしても
俺は嬉しかった……。
少しでも……俺の入る隙が欲しいと言う
欲望に狩られたのかもしれない。


「望愛、じゃあさ……」

俺は、もう一度、望愛をまっすぐ見つめる。
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