鈴村君の裏の顔

リビングに、
ほんの短い沈黙が落ちた。

望愛
「……あ、えっと。」

その空気を最初に破ったのは、
私だった。

自分でも分かるくらい、
少しだけ声が硬い。
目の前には、
テレビや雑誌で見たことのある顔が並んでいる。

……本当に、アイドルの寮なんだ。

現実味が、ようやく追いついてきた。

望愛
「今日からよろしくお願いします。」
「家政婦として通いでお世話になります、」
「三上望愛です。」


そう言って、ぺこりと頭を下げる。

翔太
「こちらこそ。」
「リーダーの森下です」

一番落ち着いた雰囲気の男性が、
穏やかに名乗った。
髪色はグレイで髪型はフェザーショート。


隆二
「宮部隆二。」
「セクシー担当ってことになってます。」


宮部と名乗る人はニコッと私に笑顔を
向けた。
髪色はアッシュベージュに髪型は
ナチュラルストーレート。

すると……すぐ……

隼人
「で、俺が——」

一歩前に出てきたのは、
最初にドアを開けてくれた人。

隼人
「鈴村隼人。MOONのセンターです。」

柔らかな笑顔。
完璧な立ち振る舞い。

まるで……王子様だ。
王子担当と言われるだけの事はある。

っと思わず、心の中でそう呟いてしまう。

髪色はカプチーノ色で髪型はミディアムウルフ。

そして、その少し後ろ。

静かに立っている、
クールな雰囲気の人と目が合った。

——樋口優希。

さっき、私の名前を呼んだ人。

髪色は黒で髪型はナチュラルストレート
の髪型が凄くイメージに合っている。

……知り合い、じゃないよね?

名前を呼ばれた理由が分からず、
少しだけ首を傾げる。

でも彼は、すぐに視線を逸らした。

優希
「……よろしく。」

それだけ。

淡々とした声。
どこか距離のある態度。

クール系担当、って由佳が言ってたな。

勝手に納得して、深く考えるのをやめた。

翔太
「じゃあ、まず簡単に説明するな。」

森下さんが話を進める。

翔太
「掃除と洗濯、あと簡単な食事の準備。」
「仕事がある日は不規則になるけど……」
「よろしく頼む。」

望愛
「はい、大丈夫です。」

答えながら、部屋を見渡す。

想像していたよりも、
ずっと“普通”だった。

ソファ。
ダイニングテーブル。
少し散らかった雑誌。

……ちゃんと生活してるんだ。

あと、各1人ずつ部屋もある。

アイドルというより、
普通の男の人たちの暮らし。

少しだけ、肩の力が抜けた。

翔太
「じゃ、今日は掃除からお願いしていい?」

望愛
「分かりました。」

エプロンをつけ、バッグを置く。

その動作をしている間も、
なぜか視線を感じる気がした。

顔を上げると、
鈴村隼人が、私を見ていた。

隼人
「……三上さんさぁ、」

望愛
「はい?」

隼人
「緊張してる?」

望愛
「正直……緊張してます。」

正直に答えると、彼は小さく笑った。

隼人
「そりゃそうだよね。」
「でもさぁー」

一歩、距離を詰める。

隼人
「ここ、仕事場でもあるけど、
「あんまり固くならなくていいよ。」

言葉は優しい。
でも、どこか探るような視線。

……不思議な人。

王子様みたいなのに、
少しだけ、違和感がある。

望愛
「お気遣い……」
「ありがとうございます。」

そう返すと、鈴村君は満足そうに頷いた。

そのやり取りを、
少し離れた場所から、
樋口優希君が黙って見ていることには
まだ、私は気づいていなかった。

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