鈴村君の裏の顔
本日最後の講義。
それは、私だけが選択している授業だった。
由佳も、さっき一緒にランチした友達も
一緒じゃない。
だから――
教室に向かう足取りは、
少しだけ静かで、少しだけ心細い。
はぁ……何だか今日は疲れちゃった。
開始時間より30分も早く着いた私は、
迷わず一番後ろの席を選んだ。
良かった……一番後ろの席空いてて。
ここなら、目立たないし、
誰にも話しかけられない。
その……はずだった。
席に腰を下ろして、
リュックからスマホを取り出す。
ワイヤレスイヤホンを耳に差し込んだ瞬間、
世界の音がふっと遠のいた。
私の大好きなアニメのオープニングの曲
が流れ込む。
そして画面に浮かぶのは……
優希君とのLINE。
《今日、仕事3本……》
《終わるの多分、深夜0時まわる》
《慰めて……望愛。》
思わず、
小さく笑ってしまう。
『大変だね』
『でも、ちゃんと休んでね。』
ファイトのスタンプを添えて送る。
すぐ既読がついて、
《ありがとう》
《それだけで頑張れる》
……ほんとに、優希君らしい。
胸が、
ほわっと温かくなる。
でもその次の瞬間……
別の通知が、画面に浮かんだ。
”隼人君”と言う文字が表示
されて……
《予定より早く終わった》
《大学まで迎えに行く》
……え?
一瞬、
意味が理解できなくて……
頭が混乱しているのに……
次の瞬間、胸が跳ね上がった。
ドクン、ドクン、ドクン
と脈が音を立てる感じで私の身体に響く。
さっきの優希君からLINEが来た時とは
明らかに何かが違う。
優希君の時は、
安心する感じだったのに……
隼人君の名前を見ると、
胸の奥がきゅっと掴まれるみたいに
キュンキュンする。
なにこれ……。
……なんで……?
というか今日、
私……約束なんてしてないんだけどなぁ。
迎えに来る理由も、思い当たらない。
慌てて、返信を打つ。
『ありがとう、でも』
『あと1時間くらいで講義終わるから』
『まだ時間かかるから寮に』
『帰った方が良いよ。』
送信。
……これでいい、よね?
そう自分に言い聞かせながら、
胸の高鳴りを必死に抑える。
その頃、
教室には少しずつ学生が集まり始めていた。
そして少し時間が過ぎるとどこかから、
黄色い悲鳴が聞こえる。
……でも。
私は気付かない。
イヤホン越しに流れるのは、
アップテンポなアニソン。
歌詞に集中して、
スマホの画面を見て
自分の世界に入っていた。
その時……
トントンっと肩に、軽い衝撃が走る。
「……?」
イヤホンをしたまま、
横を向いた瞬間……
――心臓が、止まった。
「……っ!?」
隣の席に、
いつの間にか座っていたのは――
さっき、カフェで会った人。
由佳や友達ではない……
YAMATO。
「えっ!?」
「……なんで……!?」
声にならない驚き。