鈴村君の裏の顔

すると彼は、
何でもないみたいに微笑って……
私の耳元に、すっと手を伸ばした。
「……え?」
一体何が起こってるの……!?
指先で、
耳周りの髪をそっと避けられる。
距離、近すぎる!!
息が、かかってくすぐったい。
そのまま――
イヤホンを外された。
「ちょっとごめんね。」
至近距離で、
囁くように。
「気付いてなかったから」
「……っ」
顔が、一気に熱くなる。
「望愛ちゃん、顔赤いよ?」
YAMATOって人はクスッと笑っていた。
この人は、
私の反応をみて楽しんでる。
「な、なんで私の名前……!」
思わず、身を引こうとする私に……
彼は、平然としたまま言った。
「自己紹介、まだだったね!」
「僕は、岡崎 大和。」
「望愛ちゃんと同じ大学一年だよ。」
少し間を置いて大和君は続けた。
「芸名はYAMATO、って呼ばれてる。」
「モデル兼俳優やらせてもらってるよ。」
……やっぱり、さっきのカフェの時と
同一人物だ。
「でも……」
「なんで私の名前、知ってるんですか!?」
問い詰めるように言うと、
大和は意味ありげに口角を上げた。
「さぁ、どうしてだと思う?」
答えない……
何、この人ずるい。
本当……関わりたくない!
そう思った瞬間……
「えっ!?」
スマホが、手から消えた。
「……な、なにしてるんですか!?」
「はい、LINE友達追加完了!」
画面を見せられて、私は絶句する。
「で、電話番号も保存っと。」
「ちょ……!」
「信じらんない!」
「返っ……!」
返して、と言う前に、
スマホはあっさり戻ってきた。
「これで連絡取れるね。」
満足そうな顔。
……強引すぎる。
ついていけない……。
「望愛ちゃん、さっきさ……」
大和は、
少しだけ身を乗り出してくる。
「僕が来てるの、」
「全然気付かなかったよね?」
「はい?」
もう、なんなの!?
早くどっか行ってよ……。
「スマホに夢中だったけど、」
「何してたの?」
「……音楽聴きながら、」
「LINE返してただけです!」
「ふーん」
目を細めて、大和君は言う。
「何の音楽?」
無視無視……
反応したら駄目だよ私……。
「もしかして、MOONの曲?」
……ドキッ。
この人……私とMOONの関係知ってる!?
まさかね……そんな事ない。
「ち、違います!」
私は思わず即答。
「ただのアニソンです!」
しまった……
また、この人のテンポに乗せられてる。