君に捧げるアイラブユー
君が分からない
あれから、すぐに教室に戻った。
自販機に行ったはずの私は結局何も買わずに戻ってきてしまっていて、手ぶらのまま席に座った瞬間、三木が「ジュースは?」って不思議そうに顔を上げた。
あ、そうだ、私さっき自販機行ってたんだったって今さら思い出すくらいには、頭の中が完全に東で埋まっていた。
どう説明しようかなって一瞬迷ったけど、迷う時間すら無駄な気がして、私はそのまま全部話してしまった。
自販機の前で東に会ったこと、頬を触られたこと、「一緒に帰ろう」って言われたこと、その全部。
話してる途中で自分でも「いやこれやばくない?」って思うくらいには内容が少女漫画すぎて、でも現実に起きてるのが一番怖い。
三木は最初こそ「ふーん」みたいな顔して聞いてたのに、途中から明らかに目が面白がる形に変わって、「すぐり、チョロすぎ」って笑いながら言ってきたけれど、それでもいいって思ってしまうのがさらに救いがない。
だって東だよ?東にあんな顔されて、あんな声で「お願い」とか言われて、平常心でいられる方がおかしいでしょ?
午後の授業は、本当に一文字も頭に入ってこなかった。
先生が黒板に何を書いてるのかもぼんやりしてて、ノートは開いてるのに意味のない線ばっかり増えていく感じ。
なのに頭の中はずっとさっきの東で、頬に触れられた感触とか、少しだけ困った顔とか、「天馬だけずるい」って言ったときの声とか、そういうのばっかり何回も再生される。
ねえ東、あれってどういう意味だったの。
友達としての嫉妬?それともただの冗談?そうやって考えれば考えるほど、正解が分からなくなるのに、考えるのをやめられない。