君に捧げるアイラブユー



ふと顔を上げた瞬間、階段のほうから東が降りてくるのが見えた。

何の前触れもなかったのに、視界に入っただけで心臓が一回変な跳ね方をして、そのまま落ち着く場所を失ったみたいに暴れ始める。

目が合った瞬間、東がいつもみたいに優しい顔で小さく手を挙げてくれて、その何気ない仕草だけでさっきまで壁に寄りかかって必死に整えてた呼吸とか心構えとか全部が一瞬で崩れた気がした。


ほんと、たまったもんじゃない。こっちはまだ色々整理できてないのに、そういう顔されると全部どうでもよくなりそうになるじゃん。



「ごめん、西宮。待った?」

「ううん。私も、今来たとこ」



できるだけ何でもない顔を作って返す。心臓は全然何でもなくないのに、どうにかして隠すしかない。

ねえ、今絶対変な顔してないよね私。東にバレてないよね。

こんなドキドキしてるの絶対バレたくない。

靴を履き替えて、外に出て隣に並んだのも束の間、歩き始めてすぐ東が「そういえば」と何気なく口を開いた。その声にまた心臓が反応してしまう。

隣に一人分空いた距離があるのが、安心でもあり、同時にすごく寂しくもあって、どっちの感情が本当なのか分からないまま視線だけ前を向ける。



「朝聞けなかったけど、風邪引いたの?」

「うん。昨日、傘なくて帰ったらびしょ濡れだった」



そう答えると、東がほんの少しだけ眉を寄せて足を止めた。


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