君に捧げるアイラブユー
その時の私は、本当にただ驚いていた。自分がいつそんなことを言ったのかも曖昧で、言ったことすら忘れているレベルだったからだ。
東は少しだけ笑って、肩をすくめるように言った。
『んー。なんでだろーね。西宮の言ってたことは全部覚えてるよ』
たぶん東にとっては本当に何気ない会話の延長で、特別な意味なんてなかったんだと思う。
表情も声も、いつも通りだったはずだ。
そんなふうに言われるなんて思っていなかった私は、完全に不意打ちだった。
恋愛経験なんてほとんどない私にとって、その言葉はただの優しさだけじゃない。覚えていてくれる。それも「全部」。
そのあと、当たり前みたいにカルピスソーダを買ってくれて、キャップを開けてから渡してくれたところまで含めて、あの出来事はひとつの完成された記憶になっている。
優しさがあまりにも自然で、特別扱いされているような気がしてしまって、それだけで十分だった。
あの瞬間から、私の中の東は少しずつ変わり始めた。
「あ、東だよ、すぐり」
「ん?」
三木の声に顔を上げると、自然と視線が校門へ向かう。
ちょうど今、東が校門を通って登校してくるところだった。その瞬間、胸の奥が勝手に反応する。