君に捧げるアイラブユー
「どの鍋がいいかな」
なるべく自然を装って聞く。
「微妙に大きさ違うんだよな」
東は並んでいる鍋を見ながら答える。
「西宮のとこは男子多い?」
「男子3人、女子は私と三木だよ」
「じゃあ大きい鍋のほうがいいんじゃない?」
そう言いながら東は一つの鍋を持ち上げる。その横顔をこっそり見つめる。
こんなに近くで話しているのに、東は何も変わらない。普通に話して、普通に笑っている。
でも私は違う。胸がうるさい。
東の声を聞くだけで嬉しい。名前を呼ばれるだけで嬉しい。隣にいるだけで幸せだ。さっきまでのモヤモヤなんてどこかへ行ってしまったみたいだった。
でも完全には消えていない。心の奥底にまだ残っている。南野さんのことが。あの時の視線が。東の腕にしがみついていた姿が。
だからだろうか。私は無意識のうちに周囲を見回していた。南野さんはいない。少なくとも今ここにはいない。その事実にほっとしている自分がいる。