君に捧げるアイラブユー
あーあ。雨。どうしよう。せめて小雨なら走って帰るのに。この雨量じゃ三秒で終わる。前髪も終わるし、靴下も終わる。最悪。
私はぼんやり空を見上げた。灰色の空。絶対しばらく止まないやつ。帰れない。
そんなことを考えていた、その時だった。
「ごめんね、東」
不意に、後ろから女の子の声が聞こえた。
“東”その名前に、心臓がドクンと跳ねる。反射だった。自分でも驚くくらい自然に、私は近くの下駄箱の影に隠れていた。
体が勝手に動いていた。だって東って聞こえたから。東がいる。近くに。
下駄箱の隙間からそっと様子をうかがう。バクバクうるさい心臓。嫌だ、落ち着いて。
でも、聞きたかった。東の声。今日一回も会えてないから。少しだけでも見たかったから。
なのに同時に、知らない女子といる東を見るのが怖い自分もいた。
胸の奥がざわざわする。嫌な予感みたいなものが、雨音に混ざってじわじわ広がっていく。