桐生くんには敵いません!

「悲しい時も怒ってる時も、甘いの食べたら元気になるんだよ! 食べたら、一緒にお狐様を探してあげるからね」
「あのさ、お狐様って」
「ホラ、早く食べてみて!」

 大福の包みを開き私がパクンと食べてみせたら、彼もお面をずらし口元だけ出して食べ始める。

「……美味しい」
「本当? 良かったあ。でも、あの、ごめんね」
「うん?」
「お狐さんは油揚げの方が好きなんでしょ? 大福しか持っていなくてごめんなさい」

 そう言ったら、今度はクックックっと笑い出す。
 少しは元気になったのかなってホッとした。
 それから二人で祭りの人込みを駆け回った。
 離れないように手をつないで、お狐様を探す。
 その最中、狐さんが私に言ったんだ。

「大福のお礼に、いつか福ちゃんの願いを叶えに来るね」
「わあい! じゃあ、今度会えたら」

 狐さんにお返事しようとした時、人の波の中で手が離れてしまった。
 あっという間に二人とも大人に埋もれるように見えなくなってしまって。

「狐さん? 狐さーん? どこー?」

 私の声が届いた相手は狐さんじゃなくて、青ざめたお母さんとお父さんだった。

「福ちゃん! もう、どこに行ってたの、一体!」
「あのね、狐さんがお狐様を探してたの。福はそのお手伝いをしてたのよ」

 キョロキョロと周りを見渡しても狐さんはどこにもいなかった。

 子供の頃、夏祭りの最中、私が迷子になったのは本当のこと。
 だけど、両親に発見された時は一人だったって言ってた。
 あれが本当にあったことだったのか、それとも私の夢なのか。
 確かめたくて、それから彼があの後お狐様に会えたのかも気になって。
 今もずっと彼を探してるんだ――。
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