桐生くんには敵いません!
「ちょい、待ちいや」
蛇ににらまれたカエルのごとく、言い返せずに固まってしまった私を、後ろから抱きしめる人。
私の耳元でドスの効いた低い声が、桐生くんに向かって響く。
「また、福のこと、イジメとるんか!」
「イジメてなんかないけど? 仲良く話してただけだし、ね、福ちゃん」
「福、ホンマにか?」
「う、うん、話してただけだよ」
手紙からの一連の流れを説明したら『やっぱりイジメとったやんけ――!』って怒りかねないし、その後桐生くんとの言い争いで面倒なことになるから真相は伝えてはいけない。
「ホンマに、なんもされとらんね?」と私を抱きしめヨシヨシしてくれる、このかっこいい人は『お助けヒーロー』ではない。
水谷 咲綾こと、さあちゃん。
花見が丘中学一の美少女で、彼女が手紙に書かれていた姫だ。