幼なじみの不良くんは今日も柔軟剤の匂いがする

楓吏side

​5組の教室前。
ぼーっと突っ立ってる冴を見つけて、俺は思わず足を止めた。
​(……なんだあのアホ面。絶対なんか考えてる顔だ)


​​理由なんて一つしかねえだろ。
目の前にいるのが、ずっと好きで、昨日やっとちゃんと話せた女子だからだよ!
​……言えるわけねえだろ、口が裂けても。
​(俺だって好きな子に話しかけるの緊張すんだよ! 顔もこわばるわ! 自覚してんだよ、こっちは!)
​脳内で叫びながら、必死でいつもの無表情を装う。
中1の1年間、廊下ですれ違うたびに心臓がうるさくて、話しかけられないまま終わってた俺の葛藤なんて、あの鈍感娘は1ミリも知らねえんだろうな。
​「……何ボーッとしてんだよ」
​できるだけ素っ気なく、いつも通りの声を絞り出す。
顔に出てないか? 柔軟剤の匂いに紛れて、バクバク言ってる心臓の音がバレてないか?
​ちょっと上目遣いで俺を見てくる冴と目が合って、速攻で視線を逸らした。
耳が熱い。絶対に赤くなってる。最悪だ。
​「お前が5組の前でアホ面下げて立ってるのが見えたから来たんだよ」
​呆れ声を演じながら、心の中では「わざわざ1組から歩いてきたんだよ察しろ!」とセルフツッコミを入れる。
​偏差値60の頭脳なんて、あいつの前じゃ何の役にも立ちやしない。
「なんで気まずそうな顔してんだろ」とか、どうせそんな見当違いなこと考えてんだろ、あの鈍感は。
今日も今日とて、俺の負けだ。
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