ハリボテロミオの夏の夢
大会前日の今日、各校約1時間ずつ舞台を使った練習の時間が設けられている。
この1時間を使って、本番と同じものを同じままに使ってする通し稽古が、ゲネプロだ。
「いい感じだな」
「うん」
音響の汐恩と一緒に、舞台を見ながら僕は照明を動かす。
ここまでの劇は、とても順調だ。
いい感じに、朱里さんと蘭くんがのっている。
そして最後の見せ場、昨日レテが路上で演じたロミオが毒薬を飲むシーンに差し掛かる。
「っ……あぁあああああああああああああああああ!!!!!」
棺の中に眠るジュリエット……朱里さん。
その姿を見て、ロミオ役の蘭くんが声を上げる。
「なぜ、何故なんだ、ジュリエット……!本当に、死んでしまったのか……?」
少しオーバーリアクションで、蘭くんはロミオを演じる。
レテの時と同じだ。
「……蘭の解釈だと、ロミオは結構自分のこと好きだよな……。こう、ジュリエットのことを好きな自分が好きっていうか」
「……そう、だね」
今回の台本ではカットされているけれど、本来のロミオとジュリエットでは最初、ロミオは違う女性のことがめちゃくちゃ好きだったりする。
でも、ロミオはその女性にフラれて意気消沈。そんなロミオを見かねて、彼の友人がキャピュレット家……ジュリエットの家で開かれる仮面舞踏会に忍び込んで、もっと可愛い子を見つけに行こうと誘う。
そこで見つけたジュリエットに恋をして……という流れだ。
なので、蘭くんの解釈もよくわかる。
ロミオが自分に酔っているような、若干ナルシストタイプだったとしても不思議ではない。
「……ここで僕も、永遠の安息に入るよ。目よ、これで見納めだ!」
だから、蘭くんのように、どこか自分を魅せるような芝居になるのも、よくわかる。
「腕よ、これが最後の抱擁だ!!唇よ……さあ、死神と永遠の契約をしようじゃないか!!!」
大きく体を使って、蘭くんはジュリエットを失った悲しみを表現する。
そして、懐から毒の入った瓶を取り出した。
蘭くんの手が震えている。
レテと同様、一瞬飲むのを戸惑っている。
けれど、意を決して、蘭くんが瓶に口をつけた。
その時だった。
「ッ……!!!」
「危ない!!!!」