ハリボテロミオの夏の夢
バタンっ!!!
と、大きな物が倒れた。
その音はしばらくこだまして、会場全体を包み込む。
会場が、しんっと静まり返った。
と、次の瞬間。
「きゃー!!!」
「大丈夫か蘭!?」
「救急車!!!」
一斉に、様々な声が飛び交う。
その声の中心にいたのは、蘭くんだ。
制御室の窓の向こう。
舞台の上で、大道具の祭壇の十字架が倒れている。
その横で、蘭くんが足を抱えながらうずくまっていた。
その様子を、僕はただ見ていた。
窓から見える景色は、まるで何かの映像みたいで現実味がない。
何をどうすればいいのかもわからなかった。
けれど、これはノンフィクションで、今起こっていることだ。
「ッ……!朱里さん!!!」
そうだ。
あの舞台には、蘭くんと朱里さんがいた。
ここからではよく見えなかったけど、朱里さんは大丈夫だろうか。
「おい、玲央?!」
汐恩の声も聞かないで、僕は急いで舞台へと向かう。
舞台に着くと、そこは混乱に満ちていた。
大人が何人か、蘭くんの周りに集まっている。
そのさらに周りを、生徒が取り囲んでいた。
中には泣き出している生徒もいる。
朱里さん……朱里さんは?
周りをキョロキョロ見渡す。
しかし、どこにも朱里さんの姿はない。
しばらくすると、遠くから救急車の音が聞こえてきた。
朱里さんはどこにいるんだろう?
「玲央!」
「大丈夫ですか、玲央?」
「玲央〜!!!」
客席で演技を見ていた三匹が、人混みの中で僕を見つけて駆け寄ってくる。
「あ……うん。僕は上で見てただけだから……それより、朱里さんを知らない?」
「あの女なら……あそこにいるぜ」
そう言って、イデが指差したのは一番前の観客席だった。
髪型が乱れてはいるけれど、確かにあれは朱里さんだ。
どうやら、監督と話をしているらしい。
「あの子なら多分大丈夫だよ……ロミオ役の子が庇ってたから……」
「そっか……それならよかった」
僕がほっと胸を撫で下ろした、その時だった。
「救急車きました!」
非常口から、先生が声を上げる。
その声に合わせて、救急隊がぞろぞろと会場内に入ってきた。
そしてすぐに、蘭くんはタンカに乗せられて、救急車で病院へと向かっていった。