この恋に名前をつけるとするならば

「今日は、随分気合い入れてんな。」

化粧をするわたしの姿を見て、雅が言う。

「何処か出掛けるのか?」
「うん、まぁね。」
「···あいつに、会いに行くのか。」

雅の言葉にわたしが答えに困っていると、雅はわたしの反応から「やっぱりな。」と呟いた。

「最近、仕事ばっかで疲れてるんだから、今日くらいゆっくり休めよ。」
「大丈夫だよ。わたし、平気だから。」
「どこが平気なんだよ。どう見たって、疲れた顔してるだろ。」
「···大丈夫だってば。」

わたしがそう言うと、雅は面白くなさそうな表情を浮かべながら「そんなに会いたいんだな···、あいつに。」と言い、それ以上は何も言わなかった。

それから支度を済ませたわたしは、雅に「いってきます。」と一言声を掛けたが、雅はわたしの声に反応しなかった。

自宅を出て向かうのは、命くんが言っていた"SS CLUB"という場所。

スマホでマップ検索しながら、"SS CLUB"を探した。

すると、辿り着いたのはこじんまりとした、あまり目立たない場所にある小さなライブハウスだった。

シークレットライブという事もあり、看板に書かれてる出演者バンド名に"アッシュリーガル"の名前はない。

わたしは中に入ると、辺りをキョロキョロしながら、どの辺で見ようかと場所を探した。
会場には、そこそこの人数のお客さんがドリンクを持ちながら既に待機しており、それを見たわたしは(あ、飲み物買わなきゃ!)と前回の失態を思い出し、急いで飲み物を購入した。

すると、周りの人たちがステージ前に集まり始め、ライブが始まる時間なのだと気付く。
わたしは急いで出来るだけステージの近くで見れるように場所を確保した。

前は見れればどこでも良いと思った。
しかし、今日はあの時とは違う。

命くんを見たい···、出来るだけ近くで。
< 39 / 69 >

この作品をシェア

pagetop