この恋に名前をつけるとするならば

会場内の照明が落とされ、ステージ上から足音が聞こえてくる。

「1組目のバンド名書いてなかったよね?」
「無名バンドなんじゃない?」

周りからはそんな声が聞こえてきた。

すると、ドラムの音、ベースの重低音が響き、そこにギターの音が重なる。

明らかにただの素人の雰囲気ではない音に「え、誰?誰?」と会場内がざわつき始めた。

すると、ステージ上がパッと照明に照らされ、バンドメンバーたちが姿を現す。
その瞬間、会場内は一気に歓声と共に湧いた。

わたしの目の前には、首に"Ash Regal"タオルを掛け、ベースを持つ命くんの姿があった。

(い、命くんだ······)

命くんの姿を見た瞬間、なぜか涙が込み上げてきそうになるわたし。
期間にして二週間会っていないだけのはずが、わたしの中では途轍も無く長い期間に感じていたのだ。

わたしがステージ上の命くんを見上げていると、ふと命くんと目が合った気がして、その瞬間、命くんがステージから飛び下りて来た。

「きゃああああああ!!!!!」

命くんへの黄色い歓声が上がる中、命くんは真っ直ぐにわたしの元まで歩いて来た。

そして、首に掛けていたタオルを取ると、それをわたしの首に掛けてくれたのだ。

「ようこそ、待ってました。」

命くんはそう言うと、振り返り素早くステージ上に戻って行った。

「こんばんは!アッシュリーガルです!」

命くんの掛け声と共に始まる音楽。
周りのお客さんたちは、勢い良くステージ前へと押し寄せて行った。

わたしはまさに骨抜きにされたような状態で動く事が出来ず、ただステージ上の命くんに見惚れた。

あぁ、どうしよう。
わたしは完全に命くんの沼にハマってしまった。

抜け出したいわけじゃない。
ただずっと、あなたを傍で見ていたい。
そう思った。
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